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新たな展開 …3
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そして、2日後。
ルシエルが中庭へ行くと、先日と同じベンチにイーサンが座っていた。
同じように、本に視線を落としていたが、ルシエルが近づいて来たことに気付くと、その顔を上げてニコリと微笑んだ。
「やあ。良い天気だね」
「は、はい」
「あぁ、私の事は気にせず作業をしてくれ」
「はぁ」
イーサンの考えている事は分からないが、だからこそ気にしたって仕方がないとルシエルは気持ちを切り替えて作業を始めた。
今日はバラの花壇への肥料やりだ。
堆肥を撒きながら、バラに虫が付いていないか確認する。
「んー。……よし、大丈夫」
ルシエルがバラに病気や虫の被害がない事を確認して、顔を上げると、ルシエルの方を見ていたイーサンと目が合った。
イーサンの口元は少し微笑んでいたが、その眼力のせいか蛇に睨まれたカエルのような気分になってしまったルシエル。
「っっ」
今までこうやってずっとその瞳で見られていたのだろうかと考えたルシエルは、恥ずかしさですぐに視線をバラに戻した。
居た堪れない気持ちになり、早くここから立ち去ろうと、道具を持って立ち上がる。
「君は、植物が好きなんだな」
「……えっ?」
ここから早く立ち去りたかったルシエルは、話しかけられた事で、その足を止めるしかなくなった。
「え、ぇ。はい。好きです」
「ふっ。そうか。……君に手入れされる植物は幸せだな」
「そうですか、ね?」
また突然何を言うんだ、とルシエルは驚いた。
とりあえず、挨拶して立ち去ろうとルシエルが口を開くと、それより先にイーサンが話しかけて来た。
「もう、今日の作業は終わりか?」
そう言ってニコリと笑うイーサン。
「そう、ですね。終わりです。これを片付けて帰ります」
「では」と言う言葉で締めようとしたルシエルは、再びイーサンに先を越された。
「では……もし時間があるなら、少し話をしないか?」
「……へ?」
「いや……君の顔を見ていたら、私まで仲良くしてもらえるような気がしてね」
「??」
自分の頭の上に「?」が浮かんでいるんじゃないか?とルシエルは思った。
(僕の顔?……で?仲良く?誰と誰が?バラとイーサン殿下……じゃないよね?えっ?)
「む?私の言ったことが伝わらなかっただろうか?……ククッ。すまない。言い方が悪かったな。……ぜひ、私と仲良くしてもらえないだろうか?」
「……」
イーサンの言葉に、ルシエルは固まった。
ゲームに関係することには、極力関わりたくないと思ったからだ。
(仲良くなるのは、ちょっと……。でも、断れるわけないよね?うーー)
「たまに、こうして会って、話し相手になってくれるだけでも良いんだが……」
不意にルシエルはチクリと頭が痛むのを感じた。
それはゲームで、イーサンが主人公マリーに言うセリフと同じ気がしたからだ。
(……え?なんか聞いたことあるセリフ?)
ルシエルは後から気付くのだが、今のこの状況は、ゲームの主人公マリーとイーサンの出会いの場面と同じものだった。
ルシエルが返事に困っていると、それまで余裕の笑みを見せていたイーサンが寂しそうにフッと笑った。
「無理にとは言わないが」
その時、テンパっているルシエルの頭に、ある言葉が浮かぶ。
「……っ!そ、そんなこと、ないです!こちらこそ、仲良くしてもらえたら嬉しいです」
とりあえず頭に浮かんだ言葉を口から出した後で、ルシエルはようやく気付いた。
これはゲーム中、攻略対象にイーサンを選んだ後に、初めて選択肢の現れる会話だと。
そして、ルシエルが放った言葉は、選択肢中でイーサンを喜ばせる返事だった。
ゲームと同じく、イーサンが微笑む。
これまで見せていた余裕の笑みではなく、はにかんだような笑みを。
(まさか、フラグが立った訳じゃ、ないよね?だって僕、男だし。うん。たまたまだ。きっと)
「ありがとう。……そうだ。自己紹介がまだだったな。私はイーサン・バハーク。つい先月インディール国より参った。二年生だ。……君は?」
「あ、僕……私は、ルシエル・ルーズベルトと申します。私も二年生です」
「ルーズベルト……と言うことは、君はミシェル・ルーズベルト嬢とは……」
「あ、ミシェルは姉です。双子なんです」
「そうか。どうりでどこかで見た事があるような顔だと思ったのだ」
「あの、ミシェルをご存知で?」
「ん?あぁ、クラスメイトの顔と名前くらい知っているさ。……なにより、ミシェル嬢は美しいからね。すぐに覚えたよ」
「……え?」
イーサンの言葉に、ミシェルから聞いた『噂』を思い出して、ルシエルは身構えた。
まさかミシェルを狙っているのではないだろうかと言う考えが頭を過ぎったのだ。
もしかして、ミシェルに近付く為に自分を利用しようとしているのではないか。
ルシエルの心臓は、ドクドクと大きな音を立てた。
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