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新たな展開 …5
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間も無く到着した用具箱に、イーサンと共に片付けを終えたルシエルは、次の日の放課後、イーサンとカフェに行く約束をさせられた。
その後、満足顔をしたイーサンは留学中の滞在場所である王城へと帰って行った。
それを見送ったルシエルも、慌てて家に帰った。
そして、ミシェルの部屋へと飛び込んだ。
「ミィ!」
「あら?ルゥどうしたの?」
ソファで本を読んでいたミシェルが、ゆっくりと顔を上げた。
「あの、さっ。その……言いにくいんだけど……イーサン……バハーク殿下と、ミシェルは、仲が良かったり……と言うか、殿下とお近付きになってたりとか、する?」
「……イーサン・バハーク殿下と?」
「うん」
ミシェルのキョトンとした顔を見た瞬間、ミシェルにはまだ何も害はないのだとルシエルは安堵した。
しかし、ミシェルの次の質問に固まってしまう。
「どうして?」
「え?」
「どうしてそんなこと聞くの?」
ルシエルは言葉に詰まった。
何をどう話そうかと。
変な事を言って、ミシェルに逆に気を使わせてもいけない。
そんな事を考えたが、ミシェルの射るような視線には耐えられなかった。
「実は……」
とりあえずルシエルは、イーサンとの事を一から全部話すことにした。
それで、ミシェルが狙われているのではないかと思った事。
自分を囲い込んでから、ミシェルが逃げられないようにするのではないかという事、を伝えた。
「ないわ。……いえ、絶対ないとは言い切れないけれど"私は"ないわ。もしそうなっても、キチンとお断りするもの。心配には及ばないわ。……でも、気にしてくれてありがとう」
「うん」
そうだ。ミシェルはそんな性格だった、とルシエルは今更ながら思い出した。
「って言うか……イーサン・バハーク殿下は、そんな積極的な方だったのね。教室内では、いつも受け身なお姿しか拝見してないから分からなかったわ」
「受け身?」
「えぇ……女にも男にもおモテになるようで……常にどなたかに囲まれていらっしゃるわよ」
「へぇ……」
その光景を想像したルシエルは、イーサンに同情した。
自分に向けられる笑顔が何かを含んだ裏のある笑顔だとしたら、辛いだろうと。
「で、カフェでお茶、行くの?」
「だって……行くしかないよね?」
「まぁ、そうね。……でも、心配だわ」
ミシェルが「うーん」と何かを考える仕草をした。
「何が?」
「ルゥが、よ。……って言うか、狙ってるのは私じゃなくて、ルゥなんじゃないの?」
「え?いやいや、それはないよ。だって僕、男だよ?」
ミシェルの考えを、ルシエルは笑い飛ばした。
「はぁ……それ、ルゥが言う?って言うか、知らないの?インディール国の事」
ミシェルに大きくため息を吐かれて、ルシエルは顔をしかめた。
「何が?知らない」
そんなルシエルに、ミシェルは真面目な顔をして答えた。
「インディール国は、同性婚が可能なのよ?王族も然り。つまり、噂通りにイーサン・バハーク殿下が愛人や側室を探しているとして、それが女であるとは限らない、という事よ?」
「……は?でも」
「でも、は無し」
「いや、だって、絵に描いたような王子様だよ?女に苦労しなさそうな……」
「だーかーら、それ、ルゥが言うの?貴方の彼氏さんはどなただったかしら?」
ミシェルは腰に手を当てて、フンッと怒ってみせた。
その様子に、ルシエルは黙る。
ルシエルは忘れていた。
確かに自分の彼氏がそうだ、と。
でも、これまでの経験でモテた事の無いルシエルには、ミシェルの言っている事がいまいちピンとこなかった。
「ルゥは危機感が足りないわよ。もしかしてお鈍さんなのかしら?今だって!……っ、それはまぁいいわ。……分かった。明日は私も一緒に行くから」
「えぇ!それはマナー違反……」
「分かってるわよ。私は別のお友達と行くのよ。そして、近くの席に座るだけよ。で、ルゥが危なくなったら乗り込んであげるから」
「いや、そんな事したら、ミィの立場が……」
「"そんな事"にならないように、ルゥがしっかりしてちょうだい?」
「……分かった」
こうして、次の日の放課後、ルシエルはイーサンとのお茶会(?)に臨むのであった。
結論から言うと……
イーサンに誘われたお茶会は、特に心配したような事は何も起こらない、普通のお茶会だった。
イーサンが学園のことについてルシエルに質問し、それにルシエルが答える、と言ったような内容で終始和やかな感じだった。
それから、ルシエルとイーサンはたまに放課後お茶をするようになり、友人の様に仲良くなるまで、そう時間はかからなかった。
二人が仲良くなるのと比例する様に、それを見守る人達がヒヤヒヤしたのは言うまでもない…………
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