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千客万来 …6
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「ルーウーー?今のは何かしらぁ?」
イーサンが図書館から出て行ったのを確認してから、ミシェルがそう言った。
全く笑っていないミシェルの笑顔に、ルシエルの背筋が凍る。
「い、今の?」
「私、聞いてないわよ?ねぇ?イーサン殿下とあんなに仲良くなっていただなんて。……普通の仲良し……以上に見えたけれど?」
そう言うミシェルの後ろのレオンもまた、ルシエルに冷たい目を向けていた。
それもそのはず、二人が図書館に戻って目撃したのは、恋人のように見つめ合うルシエルとイーサンだったからだ。
ミシェルはルシエルの腰が引けている事に気付いたため、すぐに助けに入ったが、レオンはそうではなかった。
アルフレッドに愛される身で何をしているのかと。
アルフレッドを側で見守って来たレオンとしては、ルシエルのその行動は許せる事ではなかった。
「う、うっ。だって、どこから拒否していいのか、分からなくて!無礼だと言われるかもしれないし。それに、僕だって、何がなんだか、よく、分からないと言うか……」
「とりあえず、拒否……しようとしてたのよね?」
ミシェルの言葉に、ルシエルはブンブンと首を縦に降る。
「もちろん!なんか……突然の事で、自分でもよく分からないけど。距離は取らなきゃとは、思ってたよ。思ってたけど、その、気付いたら……」
ルシエルが困ったように視線を彷徨わせると、ミシェルは大きく溜息を吐いた。
「なるほど……だからと言って、許しはしないわよ?で?アルフレッド様へのお手紙は?……書けてなさそうね。はぁ。レオン様、もうお時間厳しいでしょうか?レオン様?レオン様??」
何かを考えるように足元を見ていたレオンは、ハッとして顔を上げた。
「あ、あぁ。すまな……申し訳ありません。……今日はもう行かねばなりませんので。手紙が書けましたら、ご連絡ください。……では、お先に失礼致します」
「え?あ、レオン様?」
目線を彷徨わせたレオンは、そう言ってくるりと背を向けて歩き出した。
そんなレオンを見て、ミシェルは焦った。
「ちょっ……まずいわ。今のレオン様、怒ってらっしゃったんじゃない?イーサン殿下との事、アルフレッド様に報告されたらどうしましょう」
「え?」
アルフレッドに報告……と言う言葉を聞いて、ルシエルは固まった。
自分から言うならまだしも、他人からイーサンとの仲を伝えられるのは本意ではない。
しかも、怒っているレオンが何を報告するかを考えたら、顔から血の気が引くのを感じた。
「ちょっと……私、レオン様を追いかけるわ。ルゥ、ここを片付けておいて。あと、帰ったら、説教よ!」
「う。はい……」
そうしてレオンを追って令嬢らしからぬ速さで消えたミシェルを見て、ルシエルは心に決めた。
イーサンと仲良くなった事を、ちゃんと自分から言っておこうと。
その上で、イーサンとは何でもないことをキチンと伝えようと。
アルフレッドといつか別れるとしても、自分の行動が原因で最悪の別れになるのは嫌だった。
レオンに追いついたミシェルは、ルシエルの代わりに弁明をした。
ルシエルはイーサンに迫られていただけで、被害者なのだと。
これから自分がルシエルに気をつけるように念を押すと。
だから、アルフレッドにはこの事は伝えないでほしいとお願いをした。
ミシェルの話を聞いて少し落ち着いたレオンは、ミシェルの提案に同意した。
しかし、もし今後何かあるようなら、報告しないわけにはいかないとも伝えた。
ただ、レオンもレオンなりに悩んでいた。
アルフレッドがルシエルの事をどれほど大切にしているか知っているからこそ、伝え方を間違えれば、インディール国との外交問題にも発展しかねないと考えたのである。
何せアルフレッドはこの国の王太子だ。
もしルシエルを横取りされようものなら、今後インディール国との交流は無くなるのではないか、という想像も容易い。
まずは、イーサンがどんな目的でルシエルに近付いているのか見極める必要があるとレオンは考えるのであった。
その頃イーサンは、滞在先の王城に戻る馬車に乗っていた。
小窓から外を眺める顔が、ニヤリと動く。
「……決めたぞ」
そう、一人つぶやいたイーサンは、先程のルシエルとのやり取りを思い出していた。
最初はただの暇つぶしのつもりだった。
自分に特別な目を向けないルシエルと過ごすのは、心地良かった。
仲良くなって見せてくれた笑顔は、とても可愛く感じた。
それがなんだか、自国で飼っていたペットを思い出させて、ついつい構ってしまう事が多くなっていた。
いつからそうなのかは分からない。
しかし先程、イーサンはルシエルが他人に取られる事を嫌だと思ってしまった。
自分の手元に置きたい、と。
ペットに対するモノとは違う、別の感情に気付いた。
とりあえず、帰ったらルシエルの事を調べさせようと思った。
そして、自分が自国に帰るときには、連れて帰ろうと考えたのだ。
自分の、側室として。
インディール国は、同性婚が認められている。
側室もその範囲であると言う大らかさだ。
ちなみに、イーサンの本妻は政略結婚が決まっているので、これは覆らない。
学園の噂通り、結婚はイーサンの希望するところではない。
しかし、側室はイーサンの希望が第一に通る。
イーサンは、モテるという自覚あった。
ここでは文化の違いもあってか女にしかモテないが、自国では男女問わずモテたし、男女問わず相手をした。
だから、ルシエルを自分に振り向かせる自身が少なからずあった。
「さて。どんな手を使うか?」
ルシエルが自分に落ちる事を想像して、イーサンはさらに口角を上げた。
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