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ゲーム、進展? …2
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ルシエルが、マリエの事を意識しすぎないようにしようと考えた数日後。
それは突然の出来事だった。
「こんにちはー」
昼休み、一人で廊下を歩いていたルシエルは、後ろから声をかけられて振り向く。
「っ!!」
そこに立っていたのは、マリエだった。
ルシエルは油断していた。
この世界はゲームではないと思いながらも、中庭を避けていればマリエに会わないと思っていたのだ。
普通に生活していれば、同じ三年生のマリエと会うことは当たり前なのに。
ルシエルは振り返った状態のまま固まってしまったが、マリエはそんな事お構いなしに話しかけてきた。
「ルシエル様?ですよね?あのー、ミシェル様と双子って本当ですか?」
「……え?…………あ、えぇ。そう、ですが?」
貴族らしからぬマリエの態度に驚きつつも、マリエの口からミシェルの名前が出てきて、ルシエルは心臓がバクバクと音を立てるのを聞いた。
「あー、やっぱり本当なんだ……。あ!いえ、私、ミシェル様と同じクラスなんですけどー。あのミシェル様に双子がいたなんて……」
「あの?」
思わず突っ込んでしまったルシエルに、マリエが慌てて両手を前で振った。
「あっ、いえ!えっと、あまり似てないので、その……気を悪くしたらすみません」
「……」
確かに最近は男女の差が出てきたため、まるきり同じという訳ではないが、ルシエルとミシェルは間違いなく似ている。
マリエの登場にテンパっていたルシエルだったが、ミシェルを悪く言ったようなマリエの態度に、徐々に冷静になっていくのを感じた。
ルシエルは思わずマリエを睨んでしまう。
それを見たマリエはさらに慌てた様子を見せた。
「あ、そのっ、見た目ではなく雰囲気と言いますか……。ルシエル様って、とっても優しそうですもの。ほら、ルシエル様って園芸部でしょう?花が好きな人は心の優しい人ですもの!……あっ、ところで私、ルシエル様に聞きたい事があって」
「はぁ……?」
(話した事もないのに、僕の……ミシェルの何を知ってると言うんだ)
マリエのペースにイライラしながらも、ルシエルは自分を見失わないように必死に足を踏ん張った。
「ミシェル様は、婚約者はいらっしゃらないんですか?」
「…………は?なんでそんな事を?」
「いえ、その……アルフレッド様の側近の方と仲良さげにしているところを見かけて……あと、アルフレッド様とも仲が良いという噂を聞きまして。もしかして、アルフレッド様と婚約していらっしゃるのかなぁ?と」
マリエが恥ずかしそうにそう聞いた。
その質問に、ルシエルは開いた口が塞がらなくなった。
貴族同士の婚約は、大抵がお家柄みだ。
つまり、婚約は"公表"していない限り内密な事であり、他家の者が聞き出そうとするのはマナー違反なのだ。
もちろん、婚約しているかしていないかの探りはあったとしても相手を聞く事は失礼に当たる。
百歩譲って、もし個人的に探りを入れるとするならば『どういう関係なのか』と聞くべきなのである。
「それ、僕の口からは何とも……。っていうか、何でそれを聞くの?……それ以前に、君は誰?」
どうもイライラするマリエの態度に、ルシエルはゲームの事など頭から吹っ飛んでいた。
それまで恐れていたマリエを前に、心が冷えていくのを感じる。
マリエの様子が、ミシェルを下に見ているように感じたからだ。
『私、アルフレッド様が好きなんだけど、まさかあのミシェル様が婚約者だなんて言わないよねぇ?』という風に、ルシエルには聞こえたのである。
ミシェル大好きのルシエルにはたまらない状況だった。
マリエに気を使うよりも、ミシェルへの愛が優ったルシエルである。
「す、すみません!私は、マリエ・シンプソンと言います!今学年から、その、編入してきました。……あ、なんて言うか、その……私が最近アルフレッド様と仲良くしているから、もしかしたら、ミシェル様がヤキモチを妬かれているのではないかと思いまして。それで……」
「……」
マリエから"アルフレッドと仲良くしている"と聞かされて、ルシエルはギリと奥歯を噛んだ。
ミシェルはヤキモチを妬いたりはしない。
なぜなら、ミシェルはレオンと付き合っているからだ。
しかし、ミシェルではないが、ヤキモチを妬いている自分がここにいる。
マリエに何か反論しなきゃ、と口を開いたルシエルより早く、ルシエルの後ろから声が飛んで来た。
「あら、ルシエル。どうしたの?こんなところで」
そう言って隣に並んだ人物を見て、ルシエルは目を見開いた。
そこにいたのはミシェルだからである。
ミシェルの登場にも驚いたが、マリエに向けて毒を飛ばしかけていた自分を見られてしまった事に、ルシエルは大いに慌てた。
「あら?お二人で何か話してらしたのかしら?私も混ぜて頂ける?」
ミシェルかツンとした態度でマリエに接する。
「あっ、ミシェル様!……ご、ごめんなさい!私、その、えっと、たいした話じゃないんです!すみません!では、失礼します!」
ミシェルの顔を見た途端に慌ててその場を去ったマリエの後ろ姿を、ルシエルは何とも言えない気持ちで見送った。
「なんなのかしら、あの子」
ミシェルがため息をつきながら漏らした言葉に、ルシエルはハッとなった。
「ミ、ミィこそどうしたの?こんなところに一人で」
「あら?私が廊下を一人で歩いていたら変かしら?……ふふ。なんて、実は何か胸がざわついて、ルゥを探していたのよ。……あの子……マリエ様に何かされたんじゃない?大丈夫?」
「っ……えっ?いや……その」
ミシェルの言葉に、ルシエルは慌てた。
双子だからか、ルシエルの強い思いがミシェルに届いてしまったのかもしれない。
自分の感情がミシェルに移って、ミシェルがマリエを悪い意味で意識するようになってしまったら大変だ、とルシエルは考えた。
「大丈夫!なんか、花が好きだからとかそんな、話、してた。で、ちょっとそこから話が脱線したと言うか、なんて言うか……へへへ」
ルシエルはもう笑って誤魔化す、という手段しか持っていなかった。
が、ミシェルにそんな嘘が通じる訳がない。
ジトリとした目を向けられたルシエルは気まずさから目をそらした。
「……まぁ、ルシエルがそう言うのなら良いわ」
ふぅ、と一息吐いてマリエの去って行った方を見たミシェルを見て、ルシエルは背中に汗が流れるのを感じた。
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