アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
ゲーム、進展? …4
-
ルシエルが中庭に割り当てられている自分の花壇に着いて花をモヤモヤした気分で眺めていると、そこにアルフレッドがやって来た。
「やぁ。ここの花はいつ見てもとても良い状態だね。……ククッ。日頃世話している庭師までルシエルを気に入っているのだろうな」
「え?」
突然肩が触れ合うほど隣に並んだアルフレッドに、ルシエルは頬を染めた。
「いや、こっちの話だ。……ここの薔薇は、母上も気に入っているしな」
楽しそうに話すアルフレッドを見ながら、先程会ったマリエの事をルシエルは考えずにはいられなかった。
そんな心ここに在らずと言ったルシエルの様子に、アルフレッドが気付く。
「ルゥ?どうした?何か気になる事でも?」
「えっ?あ、いや……あの……」
ルシエルは先程のマリエと話した内容が気になって仕方がなかった。
自分の言葉を待つアルフレッドの優しそうな顔に、ルシエルは意を決して口を開く。
「アルは、これから……薔薇園に、行くの?」
「ん?薔薇園?どうして?」
薔薇園に行く気がなさそうな反応をしたアルフレッドに、ルシエルは嬉しさでニヤけそうになった。
「いや、実はここに来る前に、マ……シンプソン嬢と会って、薔薇園を造る手伝いをするって言ってたから。……それで」
「…………あぁ」
たった今思い出したと言うようなアルフレッドの反応も、ルシエルを嬉しくさせた。
「なんか、アルにお願いされたって言ってたけど……あの薔薇園の事」
ルシエルの言葉にアルフレッドが「ん?」と首を傾げた。
「あぁ、まぁ、確かに依頼は私が出したが……彼女に、と言うより彼女の生家の花屋に、なんだけどね。どうやら、彼女は養子になる前に自分で品種改良をした薔薇を育てていたらしいんだ。それを何気なく母上に話したら食いついてね。珍しい薔薇で薔薇園を作りたいと仰って」
「へぇ。そっか。それで……」
アルフレッドがマリエを気に入って依頼した訳ではないと知って、ルシエルはとうとうニヤけるのを抑えることはできなかった。
「何?もしかして、ヤキモチでも妬いてくれた?」
「へっ?なっ?」
アルフレッドに『ヤキモチ』と言われて、ルシエルは大いに慌てた。
しかし、考えてみればルシエルのそのモヤモヤの原因は、ヤキモチに他ならない。
それに気付いて頬を染めたルシエルを見て、アルフレッドは嬉しそうにルシエルの腰を抱き寄せた。
「ちょ!ここ!外!」
「外じゃなければ良いのか?……なら、離れに行こう。今日は寒いしな」
「ベッドで暖まろうか?」と耳元に唇を寄せて囁いたアルフレッドに、ルシエルは顔を真っ赤にした。
「で、でも!シンプソン嬢が、今日も来てくれるって」
「誰が?どこに?」
「アルが、薔薇園に来てくれるって。さっき、そう言ってたから」
ルシエルの腰を抱いて中庭から離れへ続く門へと向かっていたアルフレッドが足を止めた。
そして、小さく溜息を漏らす。
「行くわけないだろ?と言うか、私が行く必要はどこにも無い。専用の庭師もいるのだから」
「……」
アルフレッドの言葉を聞いて、嬉しい反面、ゲームの事が頭にチラつくルシエルは、気まずさで俯いた。
今日はルシエルがいるから行かないだけで、今後も行かないという保証はない。
ゲームの中では、好感度に関わらず、薔薇園に行けばアルフレッドと会えるのだから。
「それより……ルゥは何故そんなにシンプソン嬢の事を気にかけるのだ?」
再び歩き出したアルフレッドが、ルシエルを横目で見ながらそう言った。
その言葉に驚いたルシエルが顔を上げると、アルフレッドがルシエルから目線を外した。
「私に、シンプソン嬢の所へ行って欲しいのか?それとも……お前があちらに行きたいのか?」
「……えっ?」
アルフレッドの言っている意味が分からず、ルシエルは首を傾げた。
が、その後すぐに、アルフレッドが何か勘違いしているのだと理解して、首を横に大きく降った。
「違う!そうじゃない!そうじゃないよ。ただ、気になった、だけで」
ルシエルはアルフレッドを見つめたが、アルフレッドは前を見たままルシエルの方を見ようとしない。
その事で、アルフレッドが自分から離れてしまうのではないかという不安に駆られたルシエルは、必死になって言葉を続けた。
「〜〜っ。ヤキモチ!ヤキモチですっ!マ……シンプソン嬢が、アルフレッド様がアルフレッド様が、とか言うし!なんか、二人は仲良くしてるみたいだし!僕、なんて言うか……っ」
言いながら恥ずかしくなったルシエルは、それ以上言葉を続けられずに俯いた。
いくら自分が何か言っても、一度離れてしまった他人の気持ちを元に戻す事が出来ないことは、前世の経験から知っていた。
無言のまま中庭の奥門をアルフレッドの顔パスで抜け、しばらく歩いたところで、ルシエルの頭に柔らかい何かか触れた。
ルシエルがゆっくり顔を上げると、真剣な顔のアルフレッドがルシエルを見ていた。
「確かに、シンプソン嬢は花の知識が素晴らしく、会えば何かしら言葉を交わしていた事は確かだ。その事でルシエルが気を悪くしていたのなら謝ろう。……呼び方については、あの者が勝手にそう呼び始めただけで、私は許可はしていない。……が、止めろと言わなかった私に非があるのは間違いない。これも、謝る。嫌な気持ちにさせて、すまなかった」
真面目な顔をして頭を下げるアルフレッドに、ルシエルは慌てた。
恋仲とは言え、王太子に頭を下げさせている事に恐縮したのだ。
「ア、アルが謝る必要なんて、ないよ!むしろ、僕の方こそ……ヤキモチ、妬いたりして……ごめんなさい」
自分にヤキモチを妬く資格はない、と思いながら、ルシエルも頭を下げた。
アルフレッドの心が移り行くのをルシエルが責める資格はない。
むしろ、ゲームの通りになるならば、アルフレッドが運命の女性と心を交わす事は必然なのだ。
そんな事を考えるルシエルの頭に、再び柔らかいものが押し当てられた。
アルフレッドとの距離から、それがアルフレッドの唇であると気付いたルシエルは、何故か泣きたい気持ちになった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
124 / 166