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旅の恥はかき捨て …19
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夕食の後、ルシエルの部屋にミシェルが駆け込んで来た。
「な、な、な……」
勢いが良かったのは駆け込んで来た時までで、ルシエルの顔を見たミシェルはその口をパクパクさせた。
ルシエルは夕食後急いでお風呂に入った。
先程の行為の事もあるが、この後いつアルフレッドが来るか分からなかったからである。
ミシェルが部屋に入って来た時は、ちょうどお風呂から上がったばかりだった。
濡れた髪、上気した頬、赤く染まった唇。
普段なら何とも思わない姿なのに、今日はそこにいつもとは違う雰囲気がプラスされていて、ミシェルは戸惑ったのである。
「どうしたの?ミィ」
「なっ……なによ、それ」
「?」
ルシエルはミシェルが何を言わんとしているか分からなかった。
「私とレオン様のいない間に、何がっ……って言うか、あったわね!ナニか!」
顔を真っ赤にしてフルフルと震えるミシェルに、ルシエルは慌てた。
「えっ?いや、えっと?」
「ええ。ええ。両想いになったのね。おめでとう!」
ミシェルの指摘に、ルシエルは耳まで真っ赤にした。
そして、小さな声で「ありがとう」と呟いた。
「しかし、その、まさか今日の今日で……っ!あぁ、そうか、アルフレッド様の噂はこういう事だったの?そう、そうよね。火の無いところに煙は立たないわ。それにしても手の早い……って言うか、何⁈私は何だったの?いえ、何もなくて良かったけれど……複雑だわ……」
ミシェルは落ち着かない風に口と手を動かす。
「ハッ!もしかして、ルシエルに無理矢理無体を働いたなんて事は……!だ、大丈夫?ルゥ⁈その、無理矢理、そのっ、身体は……えっと」
ミシェルの考えている事を何となく受け取ったルシエルは、真っ赤な顔でそれを否定した。
「大丈夫!無理矢理とかじゃなくて!えっと、うん。大丈夫、だから。あれ?でも……なんで、分かったの?」
ミシェルにバレた事に対して、ルシエルは頭を抱えたくなった。
しかし、ミシェルに嘘は通じないだろうと諦める。
ミシェルもまた「大丈夫」と言ったルシエルに対して(大丈夫って、ナニ?って言うか、やっぱり致したのね!)と顔を真っ赤にした。
「分かるわよ!二人の距離感とか、見る人が見ればバレバレよ?あと、その……ルゥの雰囲気とか」
バレバレ、と言われた事に対して、ルシエルは穴があったら入りたい気持ちになった。
家族に初体験がバレるとは、何とも居心地が悪い。
「ぅ……。えっと。あ!ところで、ミィは?ミィはどうだったの?」
居た堪れなくなったルシエルは、無理矢理話題を変えた。
すると、それまで興奮気味だったミシェルが、スッと真顔になった。
「……なんの、こと?」
「えっ?告白するって言ってたでしょ?」
「……そんなこと、言ったかしら?」
「えっ?言ったよ!だから、僕にも頑張れって……」
「なんのことだか」
「ええっ!ちょっと!」
ミシェルがあそこまで言うから、頑張ったのに!と、ルシエルは怒った。
そんなルシエルを見て、ミシェルはフフッと笑った。
「まぁね。実際のところ、身綺麗になってからじゃないと言えないわ」
「ええっ?だって昨日は……」
「それは、ルゥがウジウジしてたから、発破を掛けたのよ。……まぁ、実際のところ、私だって早く言いたいわ。だけど、レオン様はきっと気にすると思うの。まだ正式に別れてない私が告白したところで、アルフレッド様の側近という立場のレオン様が、良い返事をくれるとは思えないわ」
「ミィ……」
ルシエルは、ミシェルが意外と真面目に考えて行動している事に驚いた。
もう、ゲームのような、気のままに行動するような悪役令嬢では無い。
そんな事を考えていたら、部屋のドアがノックされた。
「っ!!」
ルシエルは慌てた。
今、部屋に訪れるとしたら、アルフレッドしか思い浮かばなかったからだ。
慌てたように、ドアとミシェルに視線を行き来させた。
それに気付いたのか、ミシェルがニヤリと笑った。
「あら?そろそろ私はお邪魔虫かしら?」
ルシエルが返事に困っているところで、ガチャリとドアが開いた。
普段なら返事がなければ開けられることのないドアが開いたのは、そこにいるのが王太子だからである。
「ルシエル?あ……ミシェルさん」
予想通り、アルフレッドがドアの向こうに立っていた。
「アルフレッド様。どうぞお入りになってください」
対応に困ったルシエルをチラリと横目で見て、ミシェルがそう言った。
「いや。邪魔をしてすまない。出直そう」
そう言ってドアを閉めようとしたアルフレッドをミシェルが留める。
「お待ちください。私、もう部屋に戻るところだったのです。ルゥ、おやすみなさい。……では、アルフレッド様、ごゆっくり」
「あ、あぁ」
何故だか気まずそうな顔をしたアルフレッドとすれ違う時、ミシェルは思い出したように立ち止まって、こう言った。
「あ。大丈夫ですわ。私、誰にも言いませんから。それに、こんな機会なかなかありませんのよ?遠慮せず、どうぞ。……そうそう、以前読んだ本に"旅の恥はかき捨て"という言葉がこざいました。せっかくの旅行、恥ずかしがっていては楽しめないという事らしいですわ。ウフフ」
ミシェルはそう言って、ニッコリと笑った。
(えっ?そのことわざ、この世界にもあるの?って言うか、使い方がちょっと違うような……)
ミシェルの笑顔を見ながら、ルシエルは首を傾げた。
しかし、正解を知る方法をルシエルは知り得なかった。
その反対に、アルフレッドは何か気付いたようにハッとなっていたが、ルシエルはそれには気付かない。
そんな二人を見て、ミシェルは内心ニヤニヤするのであった。
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