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新学期
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夏休みが終わり、ルシエルとミシェルは2年生に、アルフレッドとレオンは専門学部へと進学した。
ゲーム開始まであと一年。
正確には、もう城下の何処かで序章が始まっている。
ルシエルは、たまに主人公マリーの存在が気になったが、それを確認する方法は何もなかった。
マリーの家名を覚えていれば良かったのだが、ゲームに家名が出てきたかすら、もう思い出せなくなっていた。
ルシエルとアルフレッドの交際は順調だった。
新学期になって一番の変化は、ミシェルとレオンがくっついた事である。
ミシェル曰く「告白するなら、夏の終わったタイミング」らしい。
婚約破棄してから云々は?とルシエルは突っ込みたかったが、まぁ今更である。
ただ、ミシェルとアルフレッドの関係は、書類上はまだ婚約者のままであった。
それは、アルフレッドに数多寄せられる見合いの話を断るためである。
書類だけだとしても正式な婚約者がいれば、見合いを断る事が容易い。
そのために書類上の婚約者を続ける事をお互い了承した。
それは、ミシェルがレオンと上手く行った事が決め手だったが、アルフレッドもミシェルも、ルシエルのためにそれらの見合いを阻止したかったという事が大きい。
そんなこんなでゲーム開始時とは大きく変わった今の状況に、ルシエルは当初の目的である「姉のミシェルを守る」事には成功したかもしれないと安堵していた。
もし、主人公マリーがアルフレッドの元に現れたとしても、ミシェルがマリーにヤキモチを妬くことはないからである。
つまり、ゲームのようにマリーを虐めたりする心配がなくなったのだ。
色々複雑ではあるが、ルシエルは現状に満足していた。
しいて言えば、マリーが誰を選ぶか……と言うのが、ルシエルのもっぱらの悩みであった。
冬に差し掛かったある日の放課後。
図書館の個室に、アルフレッドとレオンがいた。
一学期の学期末試験の対策中である。
静かな個室に、ペンを走らせる音だけが響く。
……のは、最初の30分で終わった。
「あー……やりてぇ……」
「…………アルフレッド、さ、ま」
アルフレッドがペンを投げ出して机に突っ伏した。
それをレオンがたしなめるように視線を送る。
「ルシエルに触れる機会がない……」
そう言って、額を机に押し付ける。
実際、アルフレッドとルシエルが会っているのは、ほとんどが園芸部の温室であった。
そのため、触れたとしても、キス止まりである。
「……今までは、上手くやってきたでしょう?」
冷たい視線を送りながらも、レオンはそう伝えた。
「ルシエルとは……出来ない」
アルフレッドは机に突っ伏したまま、そう答えた。
所構わずがっついて、ルシエルに体目当てと思わるのが嫌だった。
さらに、初めてルシエルと肌を重ねた時、ルシエルに戸惑いがある事をアルフレッドは見逃さなかった。
なので、無理強いなどして嫌われるのは怖かったのである。
そんなアルフレッドの様子に、レオンは心の中でため息をついた。
うちの王太子はいつからこんな色ボケになったのだ、と。
どんな女と付き合っても、自分を乱す事なく思いのままに行動していたアルフレッドはどこへ行ってしまったのかと考えた。
「あー……ここにいるのが、レオンじゃなくてルシエルだったら良かったのに……」
「それはそれは、悪うございました」
呆れつつも、レオンはこんなアルフレッドを見れる事が嬉しくもあった。
このようなダラシない姿を見せてくれる事が、初めて仲良くなれた日、自分に大事な秘密を打ち明けてくれた日の感覚を思い出させて、くすぐったい気持ちにさせられた。
「ほら、手を動かしてください。試験が終われば冬休みです。そしたらルシエル様と遊びに行かれたらよろしいでしょう?その為には試験で良い点を取る事ですよ」
「………………分かってる」
そうポソリと呟いたアルフレッドは、頬杖をついてレオンを眺めた。
「でも、レオンだって、彼女とヤリたいだろ?」
「………………口じゃなく、手を動かしてください。アルフレッド様の成績が悪ければ、私までとばっちりを食いますからね」
内心大いに動揺していたがレオンは無表情で貫いた。
アルフレッドの側近たる者、心を簡単に読まれてはいけない。
今は修行の時なのだ、とレオンはポジティブに気持ちを切り替えて、表情を引き締めた。
しかし、アルフレッドは溜息をつくばかりで、なかなか手を動かさない。
「はぁ……では、次の休みに、ルシエル様を離れにお呼びになれば良いではないですか?人払いは私が致しますので。……そのためには、休みを開ける必要がありますね?さぁ、今すぐ課題を片付けてください」
「……それを言われたら、ヤるしかない」
アルフレッドは、レオンの提案にニヤリと笑みを返して、姿勢を正した。
ルシエルの名前を出しただけで態度を変えたアルフレッドを見て、レオンはアルフレッドの目の前に人参をぶら下げる事を思いついた。
「そうですね……。試験が終われば、ルシエル様が王宮の中庭まで入れる許可証の申請をしましょう。理由は……アルフレッド様の花の手入れのお手伝いとか……なんでも良いでしょう。ルシエル様が中庭まで入れるようになれば、離れまでお連れするのも簡単になります。……ただし、私がそのお手伝いをするのは、アルフレッド様がお勉強もご公務もきちんとこなされる事が条件です。手抜きは許しません」
「お前……僕をヤル気にさせるのが上手いな。まぁ良い。一つ乗せられよう。って言うか。それ、なんでもっと早くに思いつかなかったんだ……」
アルフレッドは大きなため息を吐いた。
「申し訳ありません。あとアルフレッド様、"僕"ではなく"私"ですよ」
「はいはい。じゃ、サクッと終わらせて、私はルシエルに手紙でも書こう」
「そうなさいませ」
それからのアルフレッドの集中力を見て、レオンは本当に驚かされることになった。
アルフレッドをここまで変えさせる事のできるルシエルの存在を今後どうすべきか……レオンは大いに悩むこととなる。
そして、ルシエルを離れに呼ぶようになった事が、ある大きな問題を呼ぶのだが、それに今の二人が気付く事はなかった。
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