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ゲーム補正? …2
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それはある日の午後。
アルフレッドがルシエルと王宮の中庭で待ち合わせをしていた時である。
「アルフレッド様!こんにちは」
アルフレッドが振り向くと、頬を桃色に染めたマリエが立っていた。
「あぁ……シンプソン嬢。今日も薔薇園に?」
アルフレッドは、何故このタイミングでここにいるのかと内心邪険にしながらも、にこやかにそう返した。
今ここにルシエルが現れて二人が話しているのを見たら、きっと嫌な気持ちにさせるだろうとアルフレッドは考えた。
今日に限らずだが、なぜかアルフレッドはマリエと偶然会う事が多かった。
その度、アルフレッドは彼女に心を惑わされる。
というのも、自分の事を見つけて嬉しそうに近寄ってくると、アルフレッドの心を知っているような言葉を発する事があるからだ。
そして何よりアルフレッドが動揺した事は、彼女は"特別"かもしれない女だった事である。
先日、マリエにどうしても見てもらいたいからと頼まれ、薔薇園を一緒に歩いていた時に、彼女が躓いてしまったのを助けた。
その際に触れた感覚が、アルフレッドに衝撃を与えたのだ。
ルシエルに次いで、人生で二度目の感覚だった。
アルフレッドがマリエに触れたまま固まってしまった事でマリエから何か期待するような目で見られたが、それがアルフレッドの意識を取り戻させた。
マリエは、会話も弾むし見た目も可愛い。
草花の知識も豊富で、彼女から得るものは多い。
何よりアルフレッドにとって特別に成り得るかも知れない女性だ。
しかしアルフレッドには、ルシエルという"特別"以上の"唯一"の存在がいる。
他の人間が入る隙間など、アルフレッドの心には無い。
マリエに異性として好意を寄せられていると気付いた時、アルフレッドは何とも言い難い違和感を感じた。
好意を抱かれている事は分かるが、彼女の目は普通の恋する目とは違う気がしたのだ。
そんな微妙な感覚を抱いてから、アルフレッドはマリエと距離を置く事を決めた。
とは言え、こうして偶然会ってしまうのは何故なのか、とアルフレッドはマリエに気付かれないように小さく溜息を吐いた。
「ええ。薔薇園にも用事があったのですが、アルフレッド様に渡したい物があって……」
そう言ってはにかんだ彼女は、白い包みをアルフレッドに手渡した。
「これは?」
「うちの薔薇を使って作った、アロマキャンドルです。……先日お会いした時、何かイライラされてるような気がして。これ、火を灯して眺めると、とても良い気分転換になるんですよ?」
「……そうか。ありがとう」
アルフレッドは、イライラした態度を人前で出すことはない。
しかし前回マリエと会った時、アルフレッドは確かにイライラしていたのだ。
(その原因はマリエと偶然会った事だったのだが……)
それを見抜かれて、アルフレッドはイライラしてきた。
なぜこの女は、自分の心に波風を立てるような事を言うのだろうかと。
会って間もないのに、人の心にズカズカと入って来られるのが、アルフレッドとしては不快で仕方がなかった。
そんなアルフレッドの思考に気付くはずもなく、マリエがニッコリと笑顔を返す。
その時である。
マリエの後方にルシエルが立っている事に、アルフレッドが気付いた。
ただ、ルシエルは立ち止まってこちらを見たまま動かない。
ルシエルのその視線が、自分の手元にあるような気がしたアルフレッドは、片手を上げて側に潜んでいた従事を呼んだ。
「これを、預かって(処分して)おいてくれ」
そう言ってアルフレッドは、マリエからもらった包みをヒョイと従事に渡した。
「かしこまりました」
包みを受け取った従事は、すぐに後ろへと下がった。
「それでは、私はこれで。御機嫌よう、シンプソン嬢」
「えっ?あっ?」
マリエが驚いた表情をしたが、それを無視してアルフレッドはルシエルへと近寄った。
「ルシエル、よく来たね。……時間が勿体無い。移動しようか?」
アルフレッドがその肩に手を置くと、ようやく息を取り戻したかのようにルシエルが動き出した。
「あ、ぁ。う、ん。いい、の?……あ、いえ。宜しいのですか?」
言葉を直したルシエルが、マリエを意識しているのは明らかだった。
「ん?何が?何も気にする事はないよ?」
「えと、はい。……あ、遅くなって、申し訳ありません」
「全然待ってないよ。さ、行こうか」
そう言ってルシエルの背に手を置いてエスコートするアルフレッドを呆然と眺めていたマリエだったが、二人が横を通り過ぎる時にハッとなって通せんぼをするように前に出た。
「あのっ、お二人はどちらへ行かれるのですか?」
「え?うーん。それは簡単に話せる内容じゃないね」
歩き出したアルフレッドの隣に、マリエも付いて行く。
「アルフレッド様はルシエル様と仲が良いんですか?」
「……そうだね」
マリエに対してとりあえず笑顔は向けているが、ルシエルの様子が気になって仕方のないアルフレッドである。
「あの、ルシエル様?私も一緒に行っても良いですか?」
「……え?」
アルフレッドの笑みが固まった。
突然、矛先を向けられたルシエルは一瞬ポカンとなる。
しかし、少しの間マリエと見つめ合ったルシエルが、なぜか小さく震え出した事にアルフレッドは気付いた。
理由は分からないがマリエが原因であると思ったアルフレッドは、今度はその顔に笑みを貼り付ける事は出来なかった。
「何を言っているか分からないが、ここから先に君は入れないよ。では」
そう言って、アルフレッドはルシエルの肩を抱き寄せて、門兵のいる中門を抜けて奥へと入った。
もちろん、許可のないマリエが中門から奥に入る事は不可能である。
「なに?今の……」
マリエの呟きと鋭い視線はルシエルの背中へと向けられていたが、アルフレッドに抱き寄せられていたルシエルがそれに気付くことはなかった。
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