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マリエ・シンプソン …3
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アルフレッドルートをゲームの通りに進めていたマリエは、徐々にその違和感を大きくしていった。
後半に紡がれる、アルフレッドからの愛の言葉がない事に気付いたのだ。
それ以外はほぼゲームと同じであるのに、肝心なことを言ってくれないもどかしさが彼女を焦らせる。
それまでのアルフレッドとのイベントは、その都度それなりの手応えもあった。
マリエに笑顔も見せてくれるし、優しく接してくれる。
ただし……
後半の肝心なところで大事なセリフを言ってくれないのは、マリエにとって想定外でしかなかった。
そしてある時、マリエは気付いてしまう。
マリエに対する態度よりもルシエルに対するものの方が甘い雰囲気を醸し出していることに。
何より、アルフレッドとルシエルの物理的な距離がとても近く、マリエはかなりの嫉妬心を煽られることになった。
それまでは、アルフレッドがルシエルと仲良くしていてもそのうち自分を見てくれるようになるだろうと、マリエは楽観視していた。
アルフレッドは、自分に惚れるのだと。
しかし、そうではない現実を突きつけられる。
(なんでこんな事に?私は何も間違っていない。完璧な選択肢で来たはずなのに!)
おそらくルシエルのせいで、変わってしまったアルフレッド。
ゲームには登場しないルシエルが、なぜゲームを引っ掻き回すのか考えていたマリエは、ルシエルもゲームを知る転生者なのではないかということにふと思い至った。
(そうだ!きっと、ゲームの知識を活かして、アルフレッドを懐柔したのよ!……それなら、今までアルフレッドが私に正しいセリフを返してくれなかったことも分かる。だって、ルシエルが私のセリフを先に言っちゃってる可能性もある!……あぁ!そうに違いない!モブのくせに!ヒロインの私になれる訳ないのに!!……そうか、ルシエルはモブって言うより"バグ"なんだわ!バグならそれを消せば元の世界に戻るんじゃない⁈)
ゲームに不祥事を起こすバグ。
本来のゲームなら存在していない異質の存在。
そうしてマリエは、ルシエルをどうにか出来ないかと考え始めた。
バグを消すと言っても、ルシエルを殺すわけにはいかない。
遠くに追いやるにも、マリエにはそんな力はない。
しかし、ある条件を作れば、遠くに追いやることが可能だとマリエは気付いた。
ゲームの最終イベントで、ミシェルが修道院行きになるシナリオである。
マリエは確実にハッピーエンドルートで来ているので、最終イベントでミシェルが断罪されればそういう結果になるはずだ。
しかし、ミシェルはアルフレッドの他に恋人がいるらしく"マリエに嫉妬して悪事を働いた"という状況は出来上がらない。
(でも……ルシエルならその状況が作れる!)
そしてマリエは計画を立てた。
アルフレッドに惚れているであろうルシエルに、最後のイベントの役に立ってもらおうと。
つまり、断罪イベントをミシェルではなくルシエルにやってもらおうと考えたのである。
まずマリエは、ゲームの通りに動いてくれる騎士フィリップと宰相の息子ジョルジュに、ルシエルとミシェルに虐められているという相談をした。
もちろん、虐められてなんかいないし、ルシエルに限ってはほとんど接触もない。
しかし二人はマリエの言葉を信じ、ルシエルとミシェルに嫌悪を滲ませた。
さらにその流れで「実はアルフレッド様が好きなの」とも伝えた。
二人ともショックを受けてはいたが、マリエが泣きながら「こんなこと、あなたにしか相談できない」と言えば、二人ともそんなマリエを受け入れたのであった。
(ここまで二人は、完璧なハッピーエンドルートで来てたもんね!私に恋してることは間違いないんだから!利用できそうだし、私のために動いてもらわなきゃ!)
ちなみに、医師ランバートも利用できるかと思い様子を伺ったが、早い段階で諦めたせいか、バッドエンドと同じような対応……つまり、冷たくあしらわれた。
アルフレッドにももちろん相談をした。
しかし、アルフレッドはルシエルの影響を大きく受けているためか、思ったような反応は帰ってこなかった。
この時、マリエは考えた。
いっそのこと、ジョルジュかフィリップに流れた方が簡単に幸せになれるのではないかと。
前世で夢に見た、キラキラした自分。
そこに寄り添う、誰もが羨むような男たち。
今なら間違いなく自分自身に自信が持てる。
そんな自信たっぷりのマリエだからこそ、欲が勝った。
やはり、王子のアルフレッドを自分のものにしたいと。
ゲームの通りに進めば、必ずアルフレッドは自分のものになるのだと信じて。
(アルフレッドは私のモノなのよ!)
この世界が恋の花の舞台であることは間違いない。
ならば、ゲームの通りに進めばアルフレッドは自分のものになるのだ。
そんなマリエは気付くはずもなかった。
登場人物以外にも、この世に人間が存在する事を。
そして彼らの影響力を。
また、登場人物たちに"意思"があるという事を。
なにより、ここはゲームではなく現実であるという事実。
それらに気付けば、立ち止まれたはずなのに。
マリエは、この世界が自分のものであると信じて疑わなかった。
そうして、最終イベントの前日……
マリエはジョルジュにルシエルを呼び出してもらうように頼んだ。
「ルシエル君と一対一で話し合いたいの」と目に涙を溜めて伝えれば、ジョルジュは何も疑わずにマリエの言うことをすんなりと聞き入れてくれた。
フィリップには、バラ園でルシエルと二人きりになれるように見張りの兵を少しばかり遠ざけてもらうように頼んだ。
万が一にも、見回り中にマリエがバラを切り刻んでいるところを見られないためである。
「ルシエル君と誤解を解くために話し合いたいんだけど、その場を誰かに見られて、勘違いされたくないの」というマリエの話を、フィリップもすんなりと聞き入れた。
アルフレッドが好きだと伝えた辺りからマリエに対するフィリップの態度は若干変わってしまったが、それでもマリエに惚れていることは間違いなかった。
そうしてフィリップもマリエの言う通りに動いた。
結果、ルシエルはマリエの策にはまり、衛兵に捕らえられることとなった。
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