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Chapter11〜素直になりたい ①《秦side》
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「はぁー…」
雪道を歩きながらため息をつく。
天気っていうのは人の気持ちもしらずに、オレのグレーな心と対照的な明るい青空が広がっている。
なんであんなこと言ってしまったのだろう。
背を向けていてもわかった。ユウの怯えたような、悲しそうな目。
でもオレは、恐怖と憎悪の気持ちに負け、さっさと逃げてしまった。
別に同情を求めるわけじゃない。
ただ、黙ってオレの話を聞いてほしい。ユウ、昔、お前が孤独になったように、オレも過去に辛い経験をしたんだ。
※1 ここから秦(シン)の、学生時代の話に入ります。(高2の設定です)
※2 秦の過去を書くにあたって、人物設定を変更しましたので、Chapter1でご確認下さい。
「秦、少し居間に来なさい。」
父さんの呼びつけ?佐伯グループの経営事情とかなら、タブレットで自動的に更新されるし…
まあ、無視するわけにもいかない。とりあえず行ってみよう。
「今行きます、父さん。」
タン、タン、タン、、、
この、無駄に長い螺旋階段は、母さんの趣味だ。
「んで、何の用ですか?」
…ん?いつもはオレが座っているイスに、知らない奴がストンと乗っかっている。
「秦、この子は佐伯 真白(サエキ マシロ)君だ。君の従兄弟にあたる。 ご挨拶を。」
「…どうも。」
マシロ、と呼ばれた青年は、おれより20センチほどちいさく、女のような容姿をしていた。 普通の男子なら、これならイける、とか言うかもしれないが、オレにはわかる。コイツの、容姿とは裏のドス黒い中身が…
「こんばんわっ! シンくんだよね?初めまして! 今日からお世話になります、ましろって呼んでくださいねっ?」
無駄に可愛げのある声にするな。反吐がでる。
てか、お世話って…?
「ああ、言うのを忘れていた。真白君はこの春から、お前が通っている私立清華高校(シリツセイカコウコウ)に入学するんだ。
真白君はもともと福岡に住んでいて、この学校がある東京に私たちの家があるからこちらに来たそうだ。
九州から来てまだ間もないだろうし、先輩としても、しっかりサポートしてやるんだぞ?」
ま、じかよ…
こんなヤツと3年間!? 地獄だろ…
とはいえ、オレを育ててくれた父さんに反抗するわけにはいかない。とりあえずここは、
「わかりました。部屋は俺の隣の空いているところでいいですよね? あ、ミホさん、入浴の用意をお願いします。
真白君、九州からはるばるお疲れ様! 疲れたでしょ?…荷物持つよ。 部屋案内するから、付いてきて?」
オレのお得意の営業スマイルと、淡々としたしゃべりで父さんたちを圧倒させてやった。
(ちなみに、ミホさん、っていうのはうちの家政婦だ。)
「あ、ああ。ミホさん、私からも頼む。 さて、私も食事の用意でもしようかな?」
父さんがイスからスッと立ち上がる。
うちは、オレがまだ小さい時に母が他界してて、もともと得意だったこともあり、人情深い父は、全ての家事を家政婦に任せるわけじゃなく、料理だけは自分でやるのだ。
そして、、
「う、うん…// 案内、よろしくおねがいしますっ///」
なんで顔が赤くなるのかよく分からないが、とりあえず自分の部屋に戻るためにもはやくコイツを部屋に送ろう。
ガチャ
「はい、ここが今日から真白君の部屋だよ。
一応綺麗にはなっていると思うけど… 何か聞きたいこととか気になることがあったらいつでも言ってね?
あ、オレは右隣りの部屋にいるから」
ペコッと真白君が礼したのを確認し、すぐ部屋に戻る。
1時間後、机の上のベルが鳴った。
うちでは風呂の知らせを、ミホさんが居間の送信機から各部屋にベルを鳴らすことで伝える、という形式をとっていた。
オレが一番最後なのは、もともと潔癖のせいか、いつも湯を入れ直してもらうからだ。
ザブンッ
うちの風呂は基本露天になっていて、星が散らばる綺麗な空を毎晩見ることができる。
「ふぅ…」
やっぱ表向きの優しい秦君、っていうキャラは疲れるな。
オレは充分に体を温め、風呂を出た。
用意されていた夕食を食べ、翌朝の準備をし、ベッドに入る。
疲れていたこともあって、すぐに瞼が重くなった。
この時のオレはよく寝れたもんだよ。
これから起きる地獄のことなんか考えずに…
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