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───と、こんな風にここ華扇への編入が決まったのだった。
あれから向こうでの手続きを済ませ、帰ってきて早々にテストを解き、荷解きしたかと思えばすぐ荷造りし直し。
息付く間もなくここにやって来たのだった。
久しぶりに帰ってきたのだから、会いたい人も行きたい場所もあったのに。
まぁ、会いたい人はそんなにいなかったけど。
何はともあれ、折角帰ってきてやったのだからこの学園生活も存分に楽しんでやろうと気持ちを切り替えた。
そうして奏汰はフッと意識を浮上させ閉じていた目を開けた。
目に飛び込んでくる太陽の光に顔を顰めつつゆっくり目を明るさに慣れさせた。
腕時計を見ると、インターフォンを押した時から20分が経過していた。
声を掛けられていないから恐らく"迎えの者"はまだ来ていない、と思う。
遅いなぁと思いつつ、未だ肩で羽を休める小鳥に頬を寄せふわふわの毛並みを楽しんでいると、森の中からリスがやってきた。
勢いのまま足にしがみつくとするすると登りあっという間に胸元まできたそれに、右手を出して乗るように促してやる。
(確かポケットに…あった。)
左手で制服のポケットを漁ると、朝家を出るときに朝食代わりにと突っ込んだままのクッキーが出てきた。
2枚入り1袋のやつ。
2袋持ってきたのに、1袋バスの中で食べてそれで満足してしまったからもう1袋余っていたのだった。
乱雑にしたせいか割れているが、この子たちには丁度いいだろう。
片手で器用に更に割砕き、手と口を駆使して袋を開けた。
右手の空いている指で袋を持ち、一欠片取り出してリスの口元にやった。
それを両手で持ちさくさくと小気味よい音を立てながら懸命に頬張るリスに、また笑みがこぼれる。
更に一欠片取り出し、指先で潰し、今度は小鳥たちにやった。
嘴が指先をつつく感覚がくすぐったい。
やがて無くなり、もっと、とねだられる。
求められるままにクッキーを次々渡していると、5分ほどで無くなってしまった。
チュンチュン鳴いてもっと欲しいと訴えてくる小鳥たちに、ごめんね、もう無いんだ、と返し、クッキーの袋をポケットに突っ込んだ。
「あの、」
いよいよ手持ち無沙汰になり、どうしようかと思っていたところに唐突に声が響いた。
突然のことに驚いていると、続けざまに声が響いた。
「編入生の方ですよね?門を開けるので少し離れていてください。」
「あ、はい」
足元に置いていた鞄を持ち上げ、門から数歩離れた。
門が動いている間に、小鳥たちとリスにチュッとキスをし、ばいばい、と別れを告げた。
飛び立つ小鳥を眺めつつ、しゃがんで手を地面に近づけると、リスも足早に森の奥に消えていった。
そろそろいいだろうかと立ち上がって振り向くと、"迎えの者"と思われる眼鏡をかけた生徒が、突っ立ったまま固まっていた。
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