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12. and then
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それから奏汰とレイは、毎日そこで会うようになった。
会う、というのは、遊ぶよりもその表現が近かったからだ。動物と戯れたり、時々錆び付いた遊具で遊んだり、お昼寝もしたが、大半は他愛の無い話をした。
あの白猫と黒猫も交えて。
実はあの白猫はレイの飼い猫だったそうで、奏汰が白猫とのことを話すと喜んで連れてきた。
そして黒猫は命の恩人ではなく奏汰に懐き、野良だったため奏汰が飼うことにしていた。どこにでも着いてこようとするのを好きにさせていたら、公園にも着いてくるようになったのだった。
レイは毎日私立の学園の幼稚舎から帰ってくると、白猫──アオを連れていそいそと公園に向かったし、奏汰も、レイの熱烈な所望により、今までふらふらと宛もなく歩いていた散歩にあの公園という目的地を設定した。
奏汰は幼稚園や保育園には通わず家で過ごし、午前からの勉強が終わると散歩に出かけたので着く時間はまちまちだったが、大抵レイが先に公園で待っていた。
そして暗くなる寸前まで喋り、また明日、とそれぞれ別の帰路をたどった。
2人はそんなふうにして、お互い一人ぼっちだった日々を2人で過ごしていった。
そんな日々が続き、3年が過ぎようかという頃。
レイは幼稚舎からそのまま初等部に上がり、奏汰は別の私立の学園の初等部で、それぞれ3年生になっていた。
その容姿により初等部で多くの友達や取り巻きが増えたレイと奏汰だったが、公園で過ごす日々は相変わらずだった。
ある日のこと。
いつものように集まり、喋り、空が茜色に染まり始めたので、いつものようにまた明日、と手を振った。
出会った頃は子猫だったのだろう、もうすっかり大きくなった黒猫のニアと並んで、奏汰はいつもの帰り道を辿り始めた。
しばらく歩いていると、奏汰はふと違和感を感じた。
耳を澄ますと、かなり後方からトントンと僅かに足音が聞こえた。
──誰かいる…
珍しいな、いつも人なんていないのに。ここを通る人もいるのか。
違和感の正体が分かった奏汰は、少し驚きつつ、しかしそのまま歩き続けた。
どこまで一緒なんだろう。そう考えて奏汰は、あることに気づき目を見張った。
違和感を感じたのは大分前から。気づいたのは先ほどだが、前から感じていたということは、そのときから同じ道のりを歩いてきていたということ。
恐ろしい結論にたどり着いた奏汰は、試しに道端の花を見るふりをして足を止めた。
すると同時に、足音も消えた。
──尾けられてる。
そのことに気づいた途端、寒気がした。今までこんなことなかったのに。
違和感の本当の正体はこれだったのだ。
何が目的かは分からないが逃げなければ。とりあえず、家に近いところまで行かなければ逃げきれない。でも、もし家がバレていなかったら家には駆け込めない。危なくなるギリギリのところで進路を変えて撒こう。
瞬時に作戦を組み立てた奏汰は煩い心臓をおさえつけ、気づいていないふりで再び平然と歩き始めた。
家に近づくにつれてじわじわ足音も近づいてくる。
小さい頃からの散歩のおかげで、家の周辺は勿論、遠いところもある程度道はわかる。
確かここら辺に秘密基地みたいなところがあったはず。
──…いくか。
角を曲がった瞬間ニアを抱き寄せ走り出した。
極力音を抑えようとしたが、制服のままでローファーを履いていたためそうもいかず、速くなった足音が恐らく後ろにも聞こえてしまった。
案の定、後ろからも走り出す音が聞こえた。思ったより速い。
段々迫る足音に焦りスピードを上げようとしたが、ローファーが脱げそうで思うように走れない。
背中を冷や汗が伝う。
──やばい。
その瞬間、片足のローファーが脱げた。
思わず足を止め振り返ったことを、奏汰は後悔した。
──あ。
追跡者の足音が、すぐ側まで迫ってきていた。
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