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「…………」
これは、どう反応すれば良いのだろうか。取り敢えず、
「おい、来ているぞ」
そう話しかけるとピクリと反応した後、そいつは顔に乗せていた本を少しだけ上げる動作をした。
「…あれ、いつ入って来たの」
「ついさっきだが…」
「うっそ、気付かなかったんだけど。おじさん忍者?」
「ニンジャ…? いやそれは分からないが私は勇者をしている。それに私はまだおじさんという年齢ではないと思う」
「………どっちでも良くない?」
「良い訳──」
言い掛けた時、男が身体を起こした。そして、それまで被っていた本を取り去る。
息を飲んだ。
美しいと形容するに相応しい整った顔立ちの、癖っ毛のある金に近い明るい茶髪の若い男。
気だるげそうな雰囲気が殊更(ことさら)その造形を引き立てていて、きちんとした身なりをすればもっと華やぐだろう。
「ん? いま勇者って言った?」
「あ、ああ」
思わず目を奪われていて、反応に少し遅れる。
男は緩慢とした動きで自身の髪を雑にかき上げた。
「何だ、やっと来たの。遅すぎ。いい加減待ちくたびれて死にそうだったんだけど」
「…少し聞きたいのだが」
「なに?」
「君はここで一体何をしているんだ?」
ここは魔王城だ。そんな所で何故人間の彼が呑気にくつろいでいるのだろう。
もしかして…
「何って…「誘拐されたのか!?」………は?」
きっとそうだ。そうに違いない。
可哀そうに。
この容姿だ。きっと理不尽な理由でここへ連れて来られたのだろう。
助けが来るのをずっと待っていたんだな。
「もう大丈夫だ。私は魔王を倒しに来たんだ。直ぐに助ける」
近付いて励ますように彼の手を握る。
「ええー…何この真面目さん」
「時に魔王の居場所を知っているか?」
「ここだけど」
「ここ?」
「そう、ここ。アンタの目の前」
「…………」
目が点になる。
「君が?」
「そう、俺が」
恐る恐る口を開く。
「………魔、王?」
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