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服従
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「え、なにアメくんもしかして怖い――」
「えい」
「ぐふぅ!!!」
言い終わらない内に腹に見事な肘鉄を決められたテオ。痛そうだ。心の中で合掌しておいた。
「ねぇルカ。自慢だけど俺ってさ、あんまり動物に好かれる方じゃなかったんだよね。あっちでは」
それは…自慢の内に入るのだろうか。
「こっちの生き物は皆人懐っこいの?」
「いや全てがそうという訳ではないが…」
「ふーん」
その声音は至極意外そうで、けれどまじまじと見るだけでアメは触れようとしない。
アメに限って畏怖している訳ではないだろうが…本当にどうしたのだろう。
「…なんでお腹見せないの」
腹?
「あっちの世界にもさ、こういう生き物がいるんだけど。でも俺が近付くと皆お腹見せてきたんだよね」
「それは…自分からか?」
「うん」
「俺は何にもしてないんだけどね」と聞いて何とも言えない気持ちになった。
急所であるはずの腹部を無条件で自ら晒すという事は、服従という行為に他ならない。
漸く腑に落ちた。
つまり、アメは戸惑っていたのだ。恐れられる事もなく、ましてや生き物の方から寄って来られたという初めての体験に。
あちらの世界に魔力はないとアメは言っていた。憶測だがもしかしたらあちらの世界の生き物はアメが普通ではない存在だと本能的に感じ取っていたのかもしれない。
言い方は悪いが、未知なるものに生き物は恐怖を抱くものだ。
だが、こちらの世界では魔力は至る所に存在している。それこそ息をするのと同じくらい当たり前に。
「アメ。大丈夫だ」
優しくアメの手を取って、一頭の鼻先へと導く。触れた瞬間、少しだけアメの指先が震えたような気がした。
「こうやって触れてやれば良い」
手を添えて何度も触れる内に、ぎこちなかった動きがスムーズになっていく。
初めて生き物の触れ方を知ったようなアメの横顔に、自分の頬がだらしなく緩むのが分かった。
やがて私の手引きがなくとも戸惑いを見せなくなった手付きに、ほっと安堵の溜め息を落とした。
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