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おとぎ話のように。
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「え、あれってもしかして反マフィアの人じゃない?」
「多分そうだな…」
「あの血まみれの人、死んでるんじゃない?やだ気持ち悪い…」
「早くどっか行ってよ。」
「こんなところにいられたら俺らも危ないし、やめてくれよ…」
赤葦が木葉を背負って外へ出ると、好奇心で集まっている野次馬が数人いた。
「…好き勝手言いやがって…」
赤葦は無表情で野次馬たちに言い捨てた。すると全員面白いくらいに黙った。
「勝手に見に来て、散々ボロクソに言って、随分と良いご身分ですね。言われなくても出ていきますよ。それと…邪魔なので帰っていただけませんか?」
赤葦の暗くて何も映さない目はゾッとする威圧感を放った。
野次馬たちは恐ろしさで身を引き、大人しく帰っていくと赤葦はもう一度木葉を背負い直してアジトへ足を運んだ。
入口近くまで来ると中にいたみんなが気づいた。
「赤葦が木葉おんぶしてる!」
「あ、本当ですね。」
「疲れて寝ちゃったとか?」
全員、木葉が生きていると信じ切っていた。
赤葦は偽りなく真実を告げることが胸が痛いくらい苦しかった。
「おかえり、赤葦、木葉。」
「…」
「赤葦?」
様子がおかしいと一番に察知した木兎は近寄って木葉を見る。
信じたくなかったのは木兎も同じようで、少しフリーズしていた。
「木兎までどうしたんだよ…」
「う…ああああああああっ!!!」
木兎の反応で、なにもかもが分かってしまった。
皆の表情が固まっていくのが嫌でもわかる。
それを見たくなくて、赤葦は顔を背けた。
「う…そだろ…?木葉だぞ?要領良くて、怪我するのも珍しいアイツが?」
「ま、また悪ふざけですか?今度は赤葦さんまでグルなんて…」
「ねぇ赤葦!違うんだよね!?」
口は開いても、声帯を動かす力が出なかった。
言いたくない、言えない。
自分でさえも信じたくないし飲み込めていないのだから。
「…木葉さんは……もう、動かないんです…目も、覚まさないんです……。」
それでも本当のことを言わねばならない。言うしかない。
「ちょっと俺…部屋に行ってくる…」
「俺も…」
赤葦はなにも言えなかった。
背中にいる木葉をベッドで寝かせようと木葉の部屋へ向かった。
ベッドに寝かせると血がついていること以外は自然で、本当に眠っているようだった。
赤葦は袖口で木葉の口についている血を拭った。
もう目が覚めないのをいいことに、赤葦は木葉と唇を重ねる。
おとぎ話なら、毒リンゴを食べた白雪姫はキスで目が覚めるのにね。
貴方もそうなってほしいと。思わずにはいられなかった。
赤葦は血が付くのも気にせず木葉の胸に顔をうずめた。
血の生々しい鉄の臭いが鼻腔を刺す。
「木葉さん…好き…好きなんだよ……大好き……。」
決して届かなくても言ってしまう。
だって木葉秋紀の体はここにあるのだから、どこかで聞いてくれていると信じて。
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