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73.(side.神田)
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そうして、中学も卒業して、高校生になって。
会える時間は、もうほとんどなくなっていた。
高校は、意地でも綺羅と同じ学校に、進んだ。
そこは、お世辞でも進学校といるようなレベルではなかったから、義父は、良い顔はしなかったけれど。
それも、実力で、黙らせた。
学校のレベルのせいになんてされないように、誰より、努力した。
腱鞘炎になるほど、手の感覚がなくなるほど。
ひたすらに、血の滲むような努力をして。
けれどそれが、結局はぼくを綺羅から、遠ざけた。
どうにか同じ高校には進んでも、普通科と特進科。
校舎すら遠い、そんな距離では、休み時間に行き来することすら難しくて。
気が付いた時には、もう遅かった。
二度目の、そして、決定的な転機が、訪れた。
「レイ!!お前に、紹介したい人がいるんだ」
「あら、あなたが、レイくん?はじめまして、あかりです」
そうして、ぼくが躍起になっている間に。
彼の"特別"は、"1番"は。
ーーー「実は、あかりと、付き合ってるんだ」
もう、ぼくのものではなくなっていた。
"あかり"は、非の打ち所がないくらい、"良い女性"だった。
その名前の通り、周りを優しく照らすような。
暖かく、包み込むような。
慈愛に満ちた、女性だった。
わかっている。
これが、綺羅にとっての"しあわせ"で。
だから、自分は、それを応援しないと。
しないと、いけないのに。
「こんな良い人、ユウには勿体無いんじゃない?
…………まぁ、でも、おめでとう」
ユウがなんかやらかしたら、いつでも言って。
なんて、"良い親友"を演じながら、取り繕った笑顔でそう告げる。
その反面、頭の中は、憎悪でいっぱいだった。
奪われた、その地位と。
欲しかった、その地位。
2つをあっさりとさらっていった彼女が、憎くてしょうがなかった。
叫び出したいほどに、心は嫉妬で濁っていて。
『ひとを思いやれる、綺麗な心の持ち主に、なりますように』
いつだって、"特別"を実感させてくれた、その思い出が、くるしかった。
ごめん、無理だよ、綺羅。
…………ぼくには、もう、きみを思いやることなんて、きっと、できない。
口からこぼれてしまいそうな、汚い言葉に蓋をして。
溢れそうな、無益な涙を、押さえつけて。
そうやって、どうにか吐き出した、お祝いの言葉。
それは、それでもやっぱり、どこか濁っていて、汚いように聞こえた。
この時点で、僕の心はどうしようもないくらいに、ぐちゃぐちゃだったけれど。
…………本当の地獄は、それからだった。
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