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オーナー
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今日はオーナーがホテルへ顔を出す予定の日だった。
オーナーの皆川 進太郎(みながわ しんたろう)さんは隆之の三つ年上でしかないのにかなりのやり手でホテル マルキーズの集客数をたったの一年で二十パーセントも伸ばしたのだ。
一流ホテルでも空室が出る時代にこの結果は皆に驚かれる程だ。
皆川さんの父はかの有名な皆川グループの創設者で長男に社長を譲り、現在は会長をしている。次男の皆川さんはホテル事業としていくつかのホテルを任されているようだがその皆川グループの傘下に当ホテルが入ったのだ。
歴史は長くとも過去の栄光を引きずっているようではホテルとしては一流を保てない。
「変わることを恐れるな。バブルの頃のようにまた予約の取れないホテルと呼ばせてやる。俺についてこい。」
オーナーとしてのその言葉に年配のスタッフ達は影で笑った。
「何を若造が。バブルを知らない世代だろうによ。」
けれど皆川さんはホテルのホームページのデザインを自ら手がけたり、インターネットの宿泊予約サイトと提携してイベント毎の特別プランを掲載してもらったりと新しい試みをどんどん打ち出した。
自然とスタッフが皆川さんに付いていくようになり、今では彼を尊敬していないものはいない。
もちろん隆之もその一人だ。
「お疲れ様でございます。」
ホテルのエントランスを入って来た皆川さんを見つけるときっちりと三十度の敬礼でお出迎えをする。
男性の平均身長の隆之よりも少し背が高いだけなのに身体つきからか大分背が高く見える。上げた前髪のおかげでよく見える凛々しい眉と彫りの深い瞳はまるでハーフの様だが純日本人である。
「長谷川。今日の六時から三名で会食できるところを予約してくれ。先方は米国からの取引相手だから日本文化が伝わる店がいい。寿司や刺身は食べない相手だ。」
「かしこまりました。」
またもぴしっと敬礼すると、皆川さんはさっさと奥にあるオーナー専用の仕事部屋へ向かってしまった。
週に一、二度定期的に訪問されるのだが、実は隆之は皆川さんが苦手だった。
スタッフの憧れの的であり、尊敬はしているのだが、試すような無理難題を仰せつかることも多く、出来ませんという事も許されていないからだ。
「今日、土曜日ですよ‥。予約取れるかな‥。しかも寿司がダメと来たか。」
頭を悩ませるが、すぐに思いついた料亭へと電話を繋げた。
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