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ノックの主
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「東海林様!いらっしゃいますか?!」
「フロントの者でございます。東海林様、開けていただいても宜しいでしょうか。」
誰か来たのか二人の人物の声が聞こえた。
東海林様は、ちっ、と軽く舌打ちをして部屋の入り口に向かう。
ジャケットは脱がされネクタイは緩み、シャツははだけてほんの少し胸元が見える。
急いで元に戻そうとしたけど、指先が震えて上手くボタンが止められない。
「何か用か?いまデッサンが乗ってて大事なところなんだけど。」
「それは大変に失礼いたしました。けれど、こちらに長谷川はお邪魔しておりませんでしょうか。」
「仕事の件でオーナーが早急に会いたいそうで探しておりまして。」
とにかくここから出ないといけないことを感じ、隆之は歩いて皆の元へ近づく。
「東海林様、仕事があるようですので申し訳ありません。また機会がありましたら‥いえ、わたくしでは不相応のようでしたね。では失礼させて頂きます。」
目を合わさず深々とお辞儀をすると、東海林様は意外にも何も言わなかった。
ジュニアスイートを出てから小走りで従業員専用のエレベーターまでやって来る。
そこまで来るとへにゃへにゃと座り込んでしまった。
「長谷川ちゃん、大丈夫?ったく、何されたんだよ。」
「大丈夫ですかっ?南條くんに長谷川さんがデッサンモデル頼まれたこと聞いたんです〜!実は美里の同期でクローク担当の子が東海林様に誘われて部屋に行ったら首元のスカーフを解かれて最後は脱がされそうになったって言ってて〜!長谷川さんもやばいと思ってっ!」
「長谷川ちゃんがピンチだと思って来たんだけど‥ねぇ、まじで大丈夫?遅かった?」
来てくれたのは南條くんと美里ちゃんだった。
南條くんの手がそっと隆之の肩に触れた。
「触らないで!あっ‥ご、ごめんっ‥‥ごめん‥。」
南條くんの手を思い切り払ってしまうが、彼は何も言わずドアマン専用のナポレオンジャケットを脱いでしゃがみ込む隆之の背中に掛けてくれた。
「そういえばオーナーが探してるって‥。」
「オーナーの話はデタラメですっ!」
「とりあえず更衣室に行こうぜっ。んで、もう遅いから上がろ上がろ。」
美里ちゃんと南條くんが明るく振舞ってくれて少し気持ちが楽になった。
「ねぇ、この事って‥」
気になっていたことを口に出すと、南條くんが気まずそうに笑う。
「マネージャーか、オーナーに報告した方がいいかもね。」
そうだよね‥。美里ちゃんの同期も被害にあってるみたいだし。俺なんか男なんだから全然平気だけど‥。
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