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俺じゃ駄目?
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その後どうやって仕事をこなしていたか記憶がない。
海外からのお客様も多いので、タトゥー自体は見慣れている。老若男女問わず、ガチガチのものからファッション性に富んだものまでよくお見かけしていた。なので嫌悪感はないものの、真面目な隆之は自分がタトゥーを入れるというのは話が別だった。
何でそんな‥。
最近の不可思議な従業員からの視線はそう言うことだったのか。数日間、疑問に思っていたことの謎が解けて、なるほど、それは好奇の視線を浴びるだろうな。と思った。
「長谷川ちゃん!待って!」
仕事を終えて更衣室に向かって歩いていると南條くんが走って追いかけてきた。
「お疲れ様‥。南條くん、まだ上がりじゃないでしょ?どうしたの。」
「まぁ‥。なぁ、もしかして美里ちゃんからなんか聞いた?今日ずっと集中してなかったっしょ。」
心配そうな顔が隆之を覗き込んでくる。
「うん。でも大丈夫だよ。心配かけてごめんね。」
さっさと更衣室で着替えて帰りたくて南條くんの顔を見ずにエレベーターに乗ろうとする。
「待てって‥!」
ガンッ!と南條くんが手を挟みいれエレベーターのドアを閉まらないようにした。
「何‥。」
「‥‥。」
呼び止めたくせに、南條くんは何も言わなくなってしまう。
「早く帰りたいんだけど‥。」
「‥っ、俺じゃ駄目?長谷川ちゃん、何考えてんのか全然分っかんないけど、俺、いつも長谷川ちゃんの味方だよ。」
南條くんが少し躊躇いがちに言った、俺じゃ駄目?
その意味を考えるも思考回路が停止する。
「俺、長谷川ちゃんのことずっと気になってた。長谷川ちゃんがヤクザの世界の人間でも構わないからっ。」
ハッとして南條くんを突き飛ばしエレベーターから締め出した。
「何それ!南條くんの馬鹿っ!」
南條くんが尻餅をついた状態でポカンと隆之を見つめていたけど、エレベーターはゆっくりと静かに閉まった。
「美里ちゃんには噂なんて信じるなって言っておきながら、自分はしっかり信じちゃってるじゃん‥。」
どういった経緯でそんな噂が立ったか考えるが、思い付いたのは東海林様の部屋から出てきた時の出来事。
それにしても噂はかなり尾ひれがついており、失笑する。
「俺がヤクザかぁ‥。はは‥、もうどうでもいいっ‥。」
強く拳を握ったまま、エレベーターの壁にもたれた。
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