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車の中で
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「お待たせしました‥。」
すぐに分かる皆川さんの赤いスポーツカーに乗り込む。寮の誰かに見られなくて良かった‥。このマンションは借り上げの寮になっていて、主に若い従業員が多く住んでいた。もれなく南條くんも住んでいるので見られなくて本当に良かった。皆川さんと出かけるのを見られたら何を言われるか分かったものじゃない。
「成る程ね。デニムに黒のVネックのセーター。シンプルで俺の好み。モコモコのダウンは学生みたいでちょっと可愛い。」
「ちょ、ちょっと勝手にチェックしないで下さいよ!」
憤慨した気持ちを隠しもせずに叫ぶと、皆川さんは車を発進させながら声を出して笑う。
皆川さんて結構笑う人なんだな‥。
「素の長谷川が知りたい。見た目だけじゃなく心のほうも。」
ふと見ると今度は摯実な表情で言うものだから困る。
「皆川さんって遊び人なのかと思ってました。」
「何だと?」
「いやっ、し、失礼しました!!」
思わず口を出てしまった言葉に手を当てて反省した。
「どう思おうと良いけどな。遊び人な自覚はないな。どうしてそう思った?」
「最初からそんな気がして‥。誘い方も慣れてる感じがしたし、俺の女になれとか言うし‥。」
もごもごと思ったことを口に出して見ると、意外にも今度は怒られなかった。
「あぁ、そうか。まぁこの仕事をしてると交友関係は広いし、寄ってくる人間も多い。それに皆川の名を名乗っている以上、利用して来ようという奴もいるよ。慣れてる感じがしたのはそれのせいか?俺の女に、は正直な気持ちだけど。その言い方で本気で口説いたのはお前だけだから安心しろ。」
他の言い方でなら口説いてきたのかよ、やっぱり遊び人なんじゃ‥と疑惑の目を向けるも、皆川さんが悪い人ではないことは分かってきていた。
オーナーとしてではなく、皆川さん個人としても。
「はぁ、了解しました。それで、今日はどこに行くんでしたっけ?」
「横浜。」
横浜‥か。目を閉じると蘇ってきそうな記憶を必死で頭から振り払い、目を開けるとナビの地図が目に入った。
「首都高からですか?第三京浜道路から行った方が早くないです?」
「え?そうか?長谷川、お前詳しいな。よく行くのか?」
少しの沈黙の後、静かに答えた。
「昔、住んでましたから‥。」
「へー浜っ子か。いいな。実家は横浜のどの辺?」
その質問に答えないで窓の外を眺める隆之に、皆川さんは咎めもせずに運転を続ける。
その代わり、隆之のさらさらの髪をわしゃわしゃと撫でて、ゆっくりお前の事知っていきたい。無理はさせないから。と優しく言うものだから、皆川さんのことを意識してしまいそうでそれは絶対に駄目だと自分を戒めた。
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