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気になる
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次の日、出勤するとまず南條くんのところへ向かった。今日は小雨が降っておりとても寒い。
「おはよう。今日も寒いね。はい、使い捨てカイロ。どうせまた持ってないんでしょう?」
ロビーにあるコンシェルジュの席は温かいけれど、ドアマンの定位置は外だから今日みたいな日は寒さが応えるだろう。
「えっ、あっ‥うん。ありがと‥。」
一昨日、あんな別れ方をしてしまったからか南條くんは隆之のほうを見てくれず目が泳いでいるのが分かった。
「ふふっ、なんか南條くんらしくない。ねぇ南條くん、人のことはよく気にかけてくれるのに自分のことにもちゃんと気を配りなよ。本当風邪引くって。」
それは長谷川ちゃんこそ‥と南條くんが思っていることも気付かずに、隆之は南條くんの顔を覗き込んだ。
「どうしたの?やっぱり一昨日のこと気にしてるの?あのね、俺ヤクザじゃないから。タトゥーも刺青もないよ。」
今日会ったらハッキリとそう伝えようと決めていた。疑うようなジトっとした目で見つめられて、片眉を上げて顔をしかめると慌てて南條くんが声をだす。
「まさかっ、噂を本気にしてたって訳じゃないんだって!それにマネージャーから噂話するなって怒られたし‥。でも長谷川ちゃん、なんて言うか肩を必死で隠してるように思ったから‥俺‥。」
しゅんっとあからさまに落ち込むように下を向く南條を見ると何故か頭を撫でてやりたくなった。
ごしごしっ!っと手荒に撫で回し、慰めてやる。
「うん。ごめんね。俺ね、隠し事はあるけど言えないんだ。でも仕事に支障を来たすものじゃないよ。南條くんに迷惑かけることなんてないから。」
「迷惑なんてっ!!」
南條くんが手を固く握りしめ、珍しく笑顔を消した。
「ほらほら、お客様が近くに来そうだから。シィーね?」
人差し指を口元に当てると、南條くんが溜息をつく。
「俺、結構本気なんだけど。長谷川ちゃんのこと‥。」
「馬鹿だなぁ。そんな訳ないでしょ。じゃあ今日もよろしくね!」
南條くんが自分に寄せる好意は感じていたものの、それが恋愛感情だとは到底思えないし、情けない推測だけど頼りない自分が放っておけないのだろうと思っていた。
コンシェルジュの席に戻るために南條くんに背を向けて歩きだす。
南條くんが握りしめた手を解けないままに、下唇を噛み締めていることには気づいていなかった。
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