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テーブルの上にはコンビニのお弁当が置いてある。実は隆之の部屋には電子レンジがない。コンビニで温めてもらったのだが、帰ってからすぐに食べなかったものだから冷めてしまった。
「やっぱり早く食べれば良かった‥。」
ついベッドでうたた寝をしてしまったりシャワーを浴びたりしているうちに、すっかり夜中になってしまった。いつも仕事が終わってもどこかに出掛けるわけではない。友達もいないし、飲みに行く同僚もいない。仕事から帰る、食事をとりシャワーを浴びる、寝る。そしてまた仕事に行く。最低限のことしかしていない生活が何年も続いていた。この生活が辛いと思ったことはなかった。けれど、身体が着々と限界を告げていた。
眠れない、悪夢。慢性的な睡眠不足で食欲もムラがある、体力も追いつかない日々。それでも職場ではしっかりと仕事ができるのはコンシェルジュの仕事が本当に大切なものだから。
家では毎日こうやって帰るなりベッドに倒れこむが、疲れた身体を癒す間も無く仕事と家の往復だった。
仕方なく冷めたお弁当を食べ、ぼーっと過ごしていると玄関のドアの呼び鈴が鳴った。
「え?こんな時間に誰?」
何か頼んだ覚えもないから宅配便ではないだろう。寮の誰かと言っても部屋に行き来するような関係の人はいないし。
「はい。どなたです?」
モニターの通話ボタンを押し問いかけるが、返事を聞く前に誰か分かった。
「げっ、南條くんじゃん‥。」
思わず出た言葉は南條くんにしっかりと届いたようだ。
「げっ、って何よ?!長谷川ちゃん酷い〜。酒持ってきたからドア開けてよ〜。」
「はぁぁ?!酒って俺んちで一緒に飲もうって言うの?勘弁してよ‥。俺らそういうプライベートな付き合いしてないじゃん。」
ばっさり言い放つが南條くんはめげずにどんどんとドアを叩いてきた。
「長谷川ちゃーん!!あーけーてー!!」
鳴り響く騒音に、さすがに近所迷惑になることを懸念してとりあえず鍵をあけて南條くんを中に入れた。
「ちょっと!何やってんの!夜中に煩いよっ!」
目の前には整った白い歯を見せてニカっと笑う南條くんがいる。手にはワインを、反対の手にはお摘みらしきスナック菓子の袋を抱えていた。
「このワインね、お客様から頂いたんだ〜。一人じゃ飲めないから一緒に飲もう?」
「余ったら次の日飲めばいいじゃん。」
「何言ってんの!余らせたら酸化するじゃんっ!したら美味くねぇし。飲も飲もっ!」
南條くんのペースに乗せられてしまい、ついついグラスを彼の前に二つ差し出した。
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