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夜道
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ショックだった。
東海林様にも同じようなことをされたのに、南條くんが隆之の意思を無視して服を脱がしてきたことが。
なんだかんだで南條くんのことを信頼していたんだと思う。同僚で後輩だけどしっかり仕事をしている姿をみて、気になってるとか変なことを言われても、人付き合いが苦手な隆之が会話するのが楽な僅かな人だったから。
まだ冬の名残で夜中はとても寒い。どうせ持ってくるならコートにすれば良かった‥。寒さを凌ぐためにパーカーのフードまでかぶって夜道を歩く。
とぼとぼと目的なく歩きながら、思い出すのはさっきのこと。きっと南條くんはこの火傷の痕を見たならば過去に何があったのか問いただしてくるだろう。きっと放っておいてはくれない。それは彼の優しさでもあるだろうけど、隆之にはきつかった。皆川さんなら俺の嫌がることはしない、って‥‥‥
「俺なんで今皆川さんのこと思い出すの‥。」
悲しくて辛くて寒い。涙こそ出ないけれど、弱った心の隙間に入ってくるように皆川さんのあの落ち着いた声色を頭の中に思い浮かべる。
少し冷たいように感じるいつもの無表情。でも、決して感情がないわけではなくて表に出さないだけ。
何故か今無性に皆川さんに会いたくて仕方がなかった。
あの低い声で、どうした大丈夫かって聞いてほしい。
そしてあの逞しい腕にすがり、強く抱きしめられたい。こんな気持ちになるのは何でだろう、行く当てもなくただ苦しいから皆川さんに救ってほしいだけか。だとしたら俺は皆川さんを利用しようとしているのか。
考えても答えは出なくて、でもどうしても皆川さんに会いたくてたまらなくて自然に足はホテルマルキーズに向かっていた。
従業員専用の駐車場に行くと、皆川さんの車はまだそこに停まっていた。
こんな所で待ち伏せなんて可笑しいと思う。オーナーなのだから勿論だがシフト制ではない為に、何時に終わるのか分からない。それに会って何と言えばいいのだろう。こんな格好で、携帯しか持たずにいる隆之に呆れるだろうか。
「はぁ‥寒い。」
思わず車の側にしゃがみ込んで、膝を抱えた。
「馬鹿だよなぁ‥。何やってるんだろ、俺。」
ホテル内にある従業員専用の仮眠室を借りようか、とも思ったけれどこんな格好のまま行けるわけがないし、不審がられる。何より職場に迷惑をかけられない。ぐるぐると頭の中で理性と傷ついた心で葛藤していると、ふいに人の気配が近づいてくる。
「おい、誰だ。」
求めていた低い声が頭上に響いた。
「ここで何をしている。」
いつも隆之と話すときとは違う威圧感のある声。違うっ、皆川さんはいつも俺にはもっと‥‥。
求めてはいけないと思っていた、けどここまで来てしまった。だからゆっくりと顔をあげた。
「は‥、長谷川?!おまっ、何やってんだ!?こんな薄着で‥靴だってサンダルじゃないか。身体が冷た過ぎる・・・くそっ、本当に何をしてる!!」
戸惑いと怒りが混ざった様子で、両腕を掴まれていた。
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