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帰宅
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急いで帰る途中、思考回路が上手く回らなくてついには足までもつれる始末だった。
急ぐ気持ちが隆之を走らせ、皆川さんの家の呼び鈴を続けざまに何度も鳴らした。
「早いな。俺も今日は出先から直帰したんだ。」
「皆川さんっ‥‥」
走ってきた為に息切れをして、はぁはぁと肩で息をする。
「帰りに合鍵を作って来たぞ。明日からはこれ使え。」
「皆川さんっ!!!」
キーンと響くような大声に皆川さんがさすがに眉をひそめた。
「何だ。」
リビングに入ると良い香りがし始めていて、皆川さんが夕飯の支度をしてくれていたことに気付く。
「どうして‥、俺、何で俺をアシスタントマネージャーになんて‥。」
「あぁ、そのことか。良い案だろう?お前となら運営の仕事も円滑にしていけそうだなと思ったんだ。それにフロント部門のコンシェルジュだとまたあのドアマンに会うことも多いしお前も気不味いかと思って。まだ若いけど、そのフレッシュな感覚でアシスタントマネージャーやってみろよ。」
愉しげに皆川さんが運営の業務について話し始める。
ホテルマンならマネージャーになるのを夢見る従業員も多い。
けど‥、けど俺はっ‥‥。
「コンシェルジュよりやり甲斐あると思うぞ。お前、向いてると思う。」
「‥が‥う‥、。」
皆川さんはキッチンで料理の続きをし始めた。トントンと包丁で野菜を刻む規則的な音がする。隆之の心臓はドクドクと激しく打っているように感じ、身体の奥から溢れる苛立ちが止められない。
「ちがう‥違うっ!!俺っ、俺がしたいのはコンシェルジュだっ‥!アシスタントマネージャーなんてっ‥‥‥俺がなるなんて愚の骨頂ですって‥!やめてくれ‥止めてっ!!」
そう喚きながらテーブルの上に積んであった本をはたき落とす。バサバサと音を立てて崩れ落ちていくそれはまるで隆之の心のようで。
「コンシェルジュじゃないとっ、働く意味なんてないんだよっ‥‥!」
掠れた声で叫びながら暴れて、ガシャンと鈍い音がして何かが壊れる。
「おい。」
「コンシェルジュじゃないとっ‥そうじゃないとっ‥!」
側にあったグラスを手にとって高く持ち上げた時、大きな手が隆之の手首を捕らえた。
「分かった、分かったから‥。落ち着けって。」
強く握りしめたグラスを奪うように皆川さんが取り上げた。
「まだ暴れる?なら解放できないけど。」
きっと暴れたところで体格差からすぐに抑え込まれてしまうだろう。
「少し休め。」
そう皆川さんが隆之のミゾオチ辺りを軽く押す。すると痛みもないのに、すっと眠るように意識が途絶えた。
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