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新しい日々
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「おはようございます・・。」
「おはよう。」
朝、目を開けると横には肘をついて隆之を眺める皆川さんがいた。
あの日から皆川さんと隆之はただの上司と部下から恋人同士となった。
付き合うってどんな感じなんだろう?何をすれば良いんだろう。ましてや男同士なのだから、とモヤモヤと悩んでいる隆之を見て皆川さんは楽しそうに笑った。
「隆之らしくいてくれたらそれで構わないよ。」
そう言った皆川さんだったが、一つだけ頼まれたことがある。それは同じベッドで寝ること。
そう言われた時、ドキリとした。晴れて恋人同士になったのだし身体の関係を求められているのだろうかと。けれど、皆川さんは全くそういう素振りを見せずに言った。
「俺の居ないところでうなされて欲しくないから。隆之は慣れていることでも、俺はそういう時にちゃんと対処したい。どうしたら良いか勉強しておくから。」
そんな事を言われてももう長くこうだし、今更改善するとも思っていない。むしろ毎朝の苦しみこそが両親の死を忘れていないと実感させてくれるものだった。
忘れてはいけないからーーー。
「今日はそんなに酷くなかったな。もう息苦しくないか?なら朝食にしよう。あぁ、お前の部屋の隅に置いてあった段ボールの中身、処分しておいたから。」
もう自室で寝ることはなく、 皆川さんの部屋の広くて寝心地の良いベッドで一緒に寝ているが荷物は自室のままだった。
「えっ!あ、アレがないと。困るときもあるんですけど・・。」
「栄養ドリンクに頼るなんて不健康だ。食べることは生きることだぞ。」
そう言うとチョンっとおでこを強めに突かれた。痛たた・・と目を瞑ると、不意打ちのキスが唇に落ちてきた。チュッと軽いリップ音が聞こえ、顔が茹で蛸のように真っ赤に染まる。
「あわわわっ、、」
「ははっ、このくらいのキスそろそろ慣れろ。」
部屋を出てキッチンへ向かっていく皆川さんの背中を眺めながらベッドの中で悶える。
「そんなこと言われても無理っ・・。」
正直、キスも皆川さんから与えられたものが初めてだし、男性経験も女性経験もなかった。
そもそも性的なことに興味を持っていたかと問われたとしたら、答えは怪しい。
でもきっと皆川さんはそういう隆之の状況を理解してくれてると思う。付き合ったは良いが、早急に関係を縮めたいだとか束縛だとかはしない。
「皆川さん、大人なんだな・・。」
有難いと思う反面、少し寂しくもあったが求められた所で想いに応えられないとホッとした。
朝食を終え、皆川さんの車で共に出勤する。
以前は出勤時間が合っても別々で通勤していたが、こそこそしなくて良い、と皆川さんが半ば無理やりに車に乗せてくれるようになった。
なので甘えて乗せていただいている。
「今日の午前中、沓子が退院なんだ。兄貴が迎えに行ってその足でホテルへ来るそうだ。」
運転をしながら怠そうに話す皆川さんから歓迎ムードではないことを悟る。
「そうですか。沓子さん、入院長かったんですよね。退院できて良かったです。」
「あぁ、昔から気管支系が弱いからな。でも大事を取りすぎだ。あいつもあいつの親も過保護なんだよ。」
皆川さんだって沓子さんにだいぶ優しいけどな、とつい声に出してしまいそうになるが微笑むまでにしておいた。
「・・・・、おい。」
「はい?」
「隆之、お前さ、兄貴に気を許すなよ。」
「は?」
いきなり突拍子もないことを言われて訳が分からなかった。
「兄貴ほど、曲者な奴はいないんだ。」
シャカシャカとミントを取り出しニ、三個まとめて口に放り込む。
苛立っているとき、仕事が立て込んでいて気持ちが落ち着かないとき、こうやって食べるのが皆川さんの癖のようでそれに気づいた時少しだけ嬉しかった。
けど不安に駆られている時も、この癖が出ることには隆之はまだ気付いていなかった。
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