アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
焦り
-
「あの、私で良ければ力になります。秘書の仕事はお受けできないですけれど、何か他に役に立つことが出来れば。」
何と無く、皆川さんと倫太郎さんの関係に口を挟んではいけない気がした。けれど気まずくなるのが嫌でそう申し出てみた。
「本当に??」
パァぁと一瞬明るくなる顔にドキリとした。
見てはいけないものを見てしまったときのようなドキドキ。
「グループ会社ですしね。大したことは出来ないでしょうが、時間の許す限りのお手伝いでしたらさせて貰いますね。」
嬉しいな、そう言って倫太郎さんが隆之の手を取った。
隆之は驚いて反射的に思い切り手を振り解く。
「っ、な、、すみません。」
謝る必要もないが、倫太郎さんの考えが読めず戸惑う。しっとりと合わせてきた手には欲情が含まれていた。本能でそれを感じ取った隆之は先程の発言を後悔した。
「皆川さんのお兄様ですからね。私も何かと協力させて頂かないとです。」
皆川さんの名前を出す事により、予防線を張ったのだ。きっと聡い倫太郎さんにはそれが伝わり、眉間に軽く皺がよる。
「あいつのこと、そんなに好きか?もしかして君にとって初めての恋人じゃないのか?それは翻弄されそうだよね。進太郎、夜も凄いだろうし。」
「いえ・・・。」
上手く答えられず悶々とする。
「まさかまだプラトニックなのか?」
「プラ??」
「何それ、計算?可愛いね。身体の関係はまだなのかってこと。」
「・・・・!?あっ、、」
ガシャン!!!!!
まずいと思ったときには時すでに遅し派手な音を立てて食器が床に落ちて割れた。
「ごめんなさいっ!!!!」
急いでしゃがんでお皿を拾おうとする。
「痛っ・・!」
「止しなさい。」
手首を強く掴んだ倫太郎さんが低い声を出した。
固まる隆之を他所にパタパタと駆け寄ってきたレストランのスタッフによってお皿はすぐに片付けられていく。
「座って、珈琲を飲んだら帰るよ。」
項垂れる隆之を見ても倫太郎さんは何も言わなかった。
ただ静かに隆之も見つめているとはたと目が合う。
「こんなに綺麗な子なのに。進太郎は本気じゃないのかな。あいつが手を出さないなんて普通じゃ考えられないよ。ただでさえ身体の関係だけを迫られることだってあるようなやつなのに。その欲求、どこで発散させてるんだろうね?」
倫太郎さんの言葉にやけに胸が痛くなった。
その後の仕事も心ここに在らずとまではいかないが、皆川さんと身体を繋げていないことを不安に感じていた。本気、だからこそ自分のことを大切にしてくれてるんだと思ってた。
実際にそうだろう。
けどちゃんと繋ぎ止めていたい。
皆川さんには俺だけを見ていてほしいーーー。
隆之は焦燥感を感じていた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
58 / 61