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呆気にとられている皆川さんを尻目に、隆之は自分の服に手をかけた。ハラリと着ていたシャツを脱ぎ、ズボンも下ろす。
恥ずかしくなんか全然なかった。それよりも身体も心も寒かったから。
「お願いです‥皆川さんも脱いで。」
シャツのボタンを震える手で一つ、外そうと試みる。けれどやけに冷たく感じる指先がジンジンしてる、そのうち手首を掴まれて動けなくなった。
「温めてやる。けど裸じゃなくても‥。」
躊躇う皆川さんの顔を除きこむと、自然とため息が漏れる。皆川さんの考えてること、全部全部分かれば良いのに‥。
「俺のこと好きなんですよ‥ね?なら何で言うこと聞いてくれないの‥なんでっ、何で抱こうとしないんですかっ‥!」
掠れる声で告げたのは自分勝手で我儘な願い。
「お前、何でそんなこと考えてる。誰の差し金だ。」
「‥‥。誰でもない‥です。」
ブルルと身震いした隆之を皆川さんが引き寄せた。
「くそっ、こんなんで乗せられる俺じゃないからな。」
と言いながら、着ていたシャツのボタンを自ら外し、はだけた胸元にぐっと押し付けられた。
「‥‥‥。じんわりあったかい‥‥。」
「欲しかったのは人肌か?本当に抱いて欲しいわけじゃないだろ?」
罰が悪くなった隆之はポツリと話し出す。
「分かんない‥。ただ皆川さんなら普通、付き合ったら身体求めますよね?何で俺にはそうしないんですか?」
「お前、俺を何だと思ってるんだよ‥。」
「だって!」
「だって、なに?」
間近で目を合わした皆川さんを見ると、いつもの冷静沈着な彼ではなくて、優しく心配するような表情だった。そしてその瞳の奥は‥、欲情した男の目だった。
「えっ‥?」
「こんな淫らなことしてくる隆之相手に冷静でいられるかよ。ほんっと、隆之の行動が予測できない時があるわ‥。分かってるか?こんなに俺のこと動揺させるのお前だけだからな。」
ぐしゃぐしゃと髪をかきあげながら、ぶっきら棒に話す皆川さんの顔はほんの少しだけ赤くなっていた。
「皆川さん‥。」
「俺だって、抱きたいよ。好きなやつ抱きたくない男なんて、いないだろ。けど、それは今日じゃないな。何で?って聞くなよ。具合悪くなった恋人介抱中に抱くなんて最低だろ。
それに‥。」
(それに何‥怖いじゃん‥。)
「隆之の覚悟が本当に決まったら。初めては特別な時に特別なところで、お前を奪いたい。」
にやりと悪い笑みを含んだ顔で、隆之にキスをする。
「んーっ!んんっ‥!」
どんどんと胸を叩くと、意外にもパッと離されて何故か寂しくなる。
「はい、息吸って。もう一度。」
「ストップっ!ストップ!1分待って‥!」
ははっ、可愛いやつ。と笑う皆川さんを見て、隆之は何でこの人からの愛情を疑ってしまったのだろうかと後悔した。
もう絶対に疑っちゃいけない。自分の殻から出て行かないと、幸せが逃げてしまう‥。
「もう寒くなさそうだな?」
皆川さんが隆之の背中を撫でてくれる。
どんな傷も、苦しみもこの人となら忘れていける、そう信じた。
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