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記憶
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幸せだった。
あの時間が。
あの場所が。
あの日々が。
他愛もない会話だけでもいい。
ただ彼と一緒にいたかった。
こんな気持ちにさせてくれた彼をすきだった。愛していたんだ。
気づいていた。でも気付かないふりをした。
気付かないふりをしなければならないと思った。自分の中で何かが芽生えるのを恐れた。
しかしその感情は自分でもコントロールが出来ないほどに大きくなっていた。
気づいてしまっていた。
香水の香りひとつで苦しくなるこの胸にも、一緒にいるだけで自然と笑顔になるこの表情にも、そこに何かが生まれると信じていたこの気持ちにも、全部全部気づいてしまったんだ。
もうその頃には彼は僕の傍にはいなかった。大きく芽生えてしまったこの気持ちを誰にもぶつけることが出来ずに僕の恋は終わりを告げた。
雨が降っている。傘を差す気力もない。
周りには僕がどう写っているのだろう。
やはり滑稽なんだろうか。
もう僕は自分自身が分からなくなっていた。
これが雨なのか涙なのかさえも分からなかった。酷く頭が痛い。
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