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Chantilly Flower* 02
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うーん。流石綾人さん作だ。
見惚れるくらい綺麗に焼きあがったシュー皮にたっぷりカスタードを詰めて粉糖をまぶして。
トレイに乗せてショーケースの色とりどりの可愛いケーキ達と並べてあげた。自然と笑みがこぼれちゃう。
綾人さんのご実家は元々有名なケーキ屋さんだったんだけど
事故でご両親を早くに亡くされて、親戚のお家に長くお世話になってたみたい。
でもご両親のお知り合いにすごく良くしてくれるフランス人のパティシエさんがいっぱいいたみたいで、その力を借りて高校在学中にはフランス留学して修行を積んでたんだって。
で、日本に帰ってくる時には実はその腕を見込んで色んなホテルとか大きな店舗からお誘いを受けてたんだけど、
亡くなられたご両親がやっていた様な小さくてもネームバリューがあってあったかいお店をやりたいって誘いを全部断って今のMa Priéreを開いたんだって。
この話は常連さんでほぼ毎日来てくれる梅おばあちゃんが言ってた。
綾人さん、まだ20代半ばなのに凄いよねぇ。
私はよく知らないけど、Ma Priéreには相当なバックボーンもついてるだとかの噂を常連さんがしてたのも聞いた事あるわ。
そんな怒涛な人生をいく綾人さんだけど本当に本当に優しい人で、パティシエを目指してる私にもバイト以外の時間でもお菓子づくりの技術を教えてくれる。
とってもわかりやすくて私はいつもますます作るのが好きになっちゃう。
今日もMa Priéreは大忙し。
毎日くる常連のおばあちゃま方にお子さんがお誕生日のお母様。
店長のファンの女子高生の子達や結婚記念日のサラリーマンにお店のファンだと名乗るどこかの会長さんらしい叔父様。
平日にも関わらずたくさんのお客様を迎えた。
だけど閉店間際、動きっぱなしでへろへろになったころにその事件は起こった。
あと30分程で私の勤務時間も終わるころ。
綾人さんは精算をしながら店番をし、私は厨房で洗い物をしていた。
カラン、と入り口の扉の小さな鐘が来客を知らせた。
「いらっしゃいませ」
と綾人さんの涼やかな声が聞こえる。
今日最後のお客さまかな?
ガラス張りの厨房からそっと覗くと、
それはなんと、同じクラスの男子の志摩朝陽だった。
え、うそ。
剣道部の志摩朝陽は身長が非常に高く綾人さんとショーケース越しに相対しても頭一個分以上高く肩幅も広ければ体格もいい。
髪は黒髪短髪で顔はクラスメイトに隠れてモノノフwとか呼ばれてるほど硬派な印象がある。
いまは制服のブレザーを着ているが部活中の道着姿はもう本当にTHE 剣道部。THE 武士。
緑茶のCMとか幕末ものの映画に出て来そうな感じなのだ。
そんな彼がケーキ屋さんだなんて
なんて似合わないんだ!
どっちかというと抹茶に豆大福ってイメージでしょう。
からかってやろう。
なんて顔を出そうとした時だった。
「モンブランお一つ、お待たせしました」
志摩を見上げる綾人さんがちょうど商品の入った紙袋を手渡そうとした時だった。
「志摩ー……」
「あの、」
私の声を志摩の声がかき消した。
そして、志摩の手が紙袋を差し出す綾人さんの手の上に重なる。
え…?
「海南高校二年の、志摩朝陽です。
…俺、1年前から貴方が好きです」
言葉にするなら、"しれっと"志摩が言った。
は?
え?
「ええええええぇえぇぇええええッ?!?!」
"しれっと"した顔の志摩。
びっくりしてきょとん、としてしまっている綾人さん。
そして、私の絶叫だけがご近所さんに響き渡った。
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