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Chantilly Flower* 03
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『橘?お前何やってんだこの店で』
『何ってバイトよ!それより今の何?!どーいう意味ッ?!』
『何って、言ったままの意味だ。都築さん』
『はいっ?』
『知らない奴、しかも男で高校生が急に現れて、こんな事言ってすみません』
『い、いえ』
『返事が欲しいわけではありません。ただ、』
『…?』
『俺はこれからもきっとずっと貴方が好きです。
なので、ただ、知っていてください』
フランス帰りのパティシエ綾人さんを見つめる武士のまっすぐな眼差し。
そのサムライダマシイ。
綾人さんは最初は驚いていたけどついに力を抜くみたいに息を1つついて柔らかくクスっと笑い
『はい、わかりました』
と頷いた。
男相手にもホント女神系男子だな…。
はい、回想終了。
なんだこれえええええええええ?!
どゆこと?!どゆこと?!
クラスメイトの志摩がバイト先の店長で師匠な綾人さんを好きででも2人は男同士でまるでまさにボーイズなラブ!みたいな感じなんだけど綾人さんは美人だし志摩は武士だし綾人さんはしなやかで華奢だし志摩は武士だし体格いいしでも初対面でいきなり告白ってえええなんかそういう世界よくわかんないけどすごい美味しいんじゃないの?!志摩は武士だし!漫研の子たちがすごく喜ぶ奴なんじゃないの?!っていうか志摩は1年前から綾人さん好きだってのになんで私がMa Priéreで働いてること知らねえんだよどーいうことだよアウトオブ眼中かこの野郎。
というわけで、
「どーゆーことなの?!」
次の日の放課後、志摩の席の前の席にガタンッと勢いよく腰を下ろして問い詰めてみた。
志摩は部活に行くために荷物をまとめている最中だった。
私のことをちらりと一瞥する。
「なにがだ?」
「なにがだじゃないわよ!その、…志摩ってほもだったの?!」
最後だけちゃんと小声でね。
訝しげに見つめる私に志摩は冷めた目でため息を吐いた。
「ただ好きになったのが都築さんだっただけだ」
な、なんかかっこいい事言いやがって!
舐めきってる。絶対舐めきってるわコイツ!
「あ、の、ね!綾人さんはあーんな美人だしケーキ作りもちょーお上手くて!パティシエ界でもそれなりに有名で!優しくてファンもいーっぱいいて!一塊の高校生のよくわかんない恋心なんかきっと相手にしてもらえないくらい超絶人気なんだからね?!」
「相手にしてもらえないのくだりは体験談か?」
「ちがうわよバカーッ!!私にとって綾人さんは尊敬するひとなの!憧れなの!理想なの!師匠なの!神さまなの!!」
「それはパティシエ目指す人間としてどうなんだ?越える気でいけよ」
「そゆこと言ってんじゃないのよこの脳筋武士がッ!」
「ねー千花と志摩って付き合い始めでもしたのォ?」
「ちがう」
「ちがうッ!!」
「ヤダぁ息ぴったりィー」
外野女子たちが志摩と私を見て楽しそうにキャタキャタ笑う。
ああ、もうこれだからJKはめんどくさい!
私もJKだけど!
変な勘違いをされて一気にヤル気が萎えてしまった。
このまま誤解されてもお互い利点はなしだ。
「……あーもー!!私バイト行く!」
「俺も部活いく」
お互いに立ち上がって別々の方向に足を進めようとしたのだけど、志摩がふと首だけ振り向かせた。
「…橘」
「なによ?」
また、志摩のまっすぐな視線。
「……確かに都築さんにとっては一塊の高校生の中の一人かも知んねーけど、それで諦められるような気持ちじゃねえから」
それだけを言って胴着が入ってるんであろう大きな鞄を背負って去って言った。
「あっそ!」
その時はただ純粋に、男同士って事に対する動揺と、何より叶う見込みが少ない恋なんてやめておいた方がいいに決まってるって思いが強かった。
遠くなる背中にそれだけ叫んで、私もMa Priéreへ急ぐ事にした。
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