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小窓から花束 02
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さっきまで晴れていた空から雨が風に煽られるでもなく静かに降り始めていた。
この図書室に司書教諭として配属されていた職員が転勤になり姿を見なくなってから数日。
元から人気がなくてがらんとした本が並ぶだけの空間を窓辺に凭れて眺めてた。
なんで、今までと変わらず此処に来ちゃうんだろ。
あの人はもうここには来ないのに。
「泣いてんのか?」
「…ッ?!」
どこからか聞こえた声に慌てて辺りを見回したけれどそいつは予想外な場所からこっちを覗いてた。
もたれ掛かってた窓辺の向こう。
そいつは中途半端に開いた窓の外側から雨に濡れながらにやりと笑いながらこっちを見た。
「…なんで俺が泣かなきゃいけねーんだよ。大体お前そんなトコでなにやってんだ、川瀬」
名前は、俺みたいなクラスメイトじゃなくてもきっと知ってる。
サッカー部の有名人。高校サッカーの世界でもちょっとした有名人らしい。
川瀬隼渡。
クラスは一緒だけどそれ程話したことがあるわけじゃない。
(というか俺がクラスのヤツにあまり興味がない)
そう言えばこの先にはサッカー部が練習してるグラウンドがあるんだっけ。
「泣きそうな顔してただろ。ちょっと雨宿りさせろよ。っと…っ」
なんて言いながら川瀬は窓を少し大きく開けると窓枠に足をかけて此方側に上がってきた。
身軽にもとん、と室内に足を着く。
おいスパイクそのまま…汚ねぇな…。
「お前部活中なんじゃねぇのかよ」
「雨降ってきたし今休憩時間」
「ふーん」
「で、なんで泣いてたわけ?」
「だから泣いてねぇ」
「じゃああの噂はガセだったのか?」
「なんの話」
「お前とここの司書センセーが付き合ってたって噂」
って言われて、思考が一瞬だけ止まった。
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