アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
小窓から花束 03
-
入学して以来、元から読書くらいしか趣味がなかった俺はしょっちゅうこの図書室に入り浸っていた。
最近の本より古い本の方がそろっている此処は生徒の人気は少なくて
図書委員ですら仕事が終わったらさっさと帰っていく始末。
でもまだ読んだことのない珍しいモノばかり置いてあった上、
人が来なくて静かという俺にとっては好都合だったこの場所で出会ったのが先生だ。
最初は本のことで色々話し始めて段々それが楽しくなって、先生に会いたくて図書室に通うようになった。
一年の後期から図書委員になって先生と一緒に過ごす時間が増えて、噂の通り付き合うことにもなった…。
けれど、俺が進級するのと同時に先生は別の学校に行くことになった。
「黙ってんのは肯定のアカシか?」
バレたことに対してじゃなくて、手の平に汗をかいた。
コイツはなにがしたいんだろう。
「だったら何?」
「センセー転勤したんだよな。あれってお前の所為なの?」
「違う。転勤はただの偶然。ヘマはしない人だったから」
「じゃあ、離ればなれになったことが寂しくて泣いてたって事か」
「うるっさい。泣いてないっつってんだろ。なんなのさっきから…っ?!」
そう言った瞬間にぐいっと腕を軽く引き寄せられて川瀬の腕が窓のカーテンを勢いよく閉めた。
レールの擦れる音と一緒にそのまま背中を押しつけられて気が付いたら川瀬の顔が目の前にあった。
ちかい。
ツリ目がちな瞳が特徴的な、整った顔立ち。
カーテンで誰かに見られることの無くなった、
鼻と鼻が触れ合ってしまいそうなその距離。
「…な、に」
「俺が慰めてやるよ」
「…意味わかんないこと言うな」
だから本当にコイツはなにがしたいんだ。
意図の読めない不躾で無神経な質問ばかりと行動。
目だけは真剣なのか俺を見つめていた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
3 / 5