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小窓から花束 04
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「これ、最近何時も庇ってるの気付いてんだけど」
そう言って、川瀬は俺の首筋を撫でた。
そこには紅い、小さな痕。
『ユキ…痕が消えたら、忘れろ』
そう言って最初で最後に抱かれて、キスをしたのはまだ数日前。
最後のさよなら。
もう会わない約束。
川瀬の指で撫でられた傍からフラッシュバックする全てのシーン。
ぞくりと身体が震えた。
「…ッゃ、め…触るなッ!!」
川瀬の手から首筋を庇ってから一気に涙が出そうになった。
そんな俺の顔を見てから川瀬は俺の目尻に触れてくる。
「虚勢はってたのが、…傷口に触れただけでこんなぼろぼろになんのかよ」
そういう風に言う川瀬は何処か優しく見えたけれど、
今は触れられた場所の傷みが心に重く沈んで先生が居なくなったことを再確認するみたいな感覚に囚われた。
途方もなく寂しい。苦しい。痛い。
「うるさい、…どっか行けよ」
「やだね」
「……お前ホント意味わかんない。なにが、したいんだ」
「だから言ってんだろ。慰めてやるって」
言われて、もう堪えられなくなって涙が零れた。
目尻に触れていた川瀬の手に、俺の涙が伝った。
川瀬に頭を撫でられて、初めて先生に頭を撫でられた時を思い出す。
先生もこうやって最初は少し不器用に撫でてくれてた気がする。
膝から力が抜けてその場に座り込むと川瀬も一緒にしゃがみ込む。頭は撫でたまま。
「いみ…っわかんないから」
「わかんなくていーよ。今は」
そう言いながら額に口付けをされた。
何故か、余計に涙が出る。
頭を撫でる手が、悔しくも暖かく感じる。
二人でいる時間を守りたくて
誰にも言わない相談もしない恋愛をしてた。
好きな気持ちと同じくらい不安もあって
それでも止めることが出来ない恋だったから。
でも今、さよならをして初めてこんなに泣けた気がした。
(かなり無茶苦茶な慰めだったけれど、なぁ…)
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