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小窓から花束 05<完>
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雨がやむのと同時くらいに泣きやんで
あいつは一度だけ頬にキスをして小さく笑ってまた窓から出ていった。
それからその出来事がまるで無かったかのように何もなく何日かが経って
首筋の痕がすっかり消えてしまった。
それで言われたとおりに先生の事を本当に忘れられたらきっと美談にでもなっただろうに…。
ただ、心の何処かですっきりしたものがあるのは誰かのお陰なのか、ただ俺が本当に淡白なのか。
「まーだこんな湿っぽいとこに引っ込んでんのか?」
いつものように図書室にいたら窓からそんなからかい笑う声が聞こえた。
思わず、呆れたため息ひとつ。
「…何の用だよ」
「相変わらず愛想ねぇな」
「うるさいよ」
「お前にこれやるよ」
「は?」
そう言って渡されたのはティッシュでくるまれた小さな花束だった。
タンポポやオオイヌノフグリやハルジオン。
雑草ばかりだけど綺麗に色合いが揃えてあるのはなんだか川瀬らしいと思った。
「ホントはさ、…この窓からお前らがキスしてんの一回だけ見かけた事あって知ってたんだよ。二人のこと」
「…え」
「俺はその前からずーっとお前のこと気にはなってたけどな」
だから本当は俺の方が先なんだからな。
なんて意味の分からない自慢をされた。
それから外から手が伸びてきてまた首筋に触れる。
「痕消えたみたいだし、ちゃんと口説きに来た」
と言いながら俺の手の中にある花に目をやる。
「なんでそれとこれが関係すんだよ?」
「あ?花束は口説く時の必須アイテムだろーがよ」
と、またもやよくわからない胸の張り方だ。
正直に言おう。
こいつの思考回路はわからん…。
贈ってきた当人に似て、不器用な花束を見つめて思う。
でも…まあ、悪い気はしないけれど。
こみ上げてくるものに、思わず顔が緩んでしまった。
すると川瀬がまじまじとこちらを見つめてきた。
それから少しだけ笑って、その手が窓の外から俺の頬に触れる。
川瀬の、真っ直ぐな目。
「なぁ、…俺のモノになって」
その目にどき、として思わず顔が熱くなった。
「まだあいつが忘れられないなら…」
腕を引かれてされるがままに少し前屈みになると首筋に唇が当たった。
一度舌先で舐められてから少し吸い付かれる。
軽く、ちくりとした痛みが走った。
「忘れられるまで、ここに先約入れとく」
そう言ってニヤリと笑った川瀬の顔。
不器用な花束の健気な匂い。
川瀬を好きかどうかはわからない。
けど、
俺はきっとそれらをずっと忘れないと思った。
Fin....
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『小窓から花束』終了でございます。
ここまで読んでくださりありがとうございました。
二人のその後のお話を書くかはまだ未定です。
なにせちょっホモ(ちょっとしたホモ)シリーズですので。
新作18禁短編始まりました。こちらもよろしくお願いします。
http://blove.jp/novel/158050
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