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「みー、ちゃったぁ」
人気のない廊下を、教室に向かって歩いていた時。
嫌にねちっこい言い方をする声が俺の耳に届いた。
目の前の曲がり角。その手前の柱にもたれ掛かるようにして立つ、ニヤニヤ笑う男。
「何か御用ですか、会計様」
米倉秋人。チャラチャラしてる割には生徒会の仕事をしっかりこなしているらしい、下半身ゆるゆる男。
こいつは白土に興味が無いらしく、1度も姿を現したことがない。
「やだなぁ、そんな他人行儀にならないでよ。
俺とお姫様の仲でしょー?」
「初対面」
「うわ、単語ですっぱり切られた」
ケラケラ楽しそうに笑う会計に、何がしたいのかと視線を投げかける。会話が通じない人間と会話をすることは無駄だと思う。
ニヤニヤした笑みを崩さないまま、会計は俺に近づいてきた。
1歩こちらに歩み寄れば、俺は1歩下がる。
「警戒してるねぇ、猫みたいでかーわいー」
1歩。
鳥肌しか立たない。なんなんだこいつ。
「何の用かって、聞いてるんだけど」
1歩下がる。
綺麗な顔してるくせに気持ち悪い笑みを浮かべる会計。
仕事はしなくていいのか。
「お姫様って囲われてるだけかと思ってたけど、強いんだねぇ」
1歩。
こっちに来るなって。ゾワゾワする。
思わず手が出そうになるけど、こいつ殴ったら確実に俺の平穏が終わる気がする。我慢。
「覗き見なんて、悪趣味。
助けてくれてもよかったんじゃないか、生徒会」
1歩下がる。
口の端を釣り上げる会計。サイコでも入ってるんじゃないか。
「結構前から君に興味があってさぁ。
俺、ペット飼うなら猫がいいなって思ってたの」
1歩下がる。こいつは会話をする気がとことんないようだ。トス、と背中が壁にぶつかった。
しまった、逃げ場が。
「ちょー、俺の好み。
ね、喰われてみない?」
背中に気を取られた隙に、顔の横に伸びてきた手が俺の逃げ道を塞いだ。
おでこがくっつく距離まで顔を近づけてくる会計に、思わず腕が出る。が、その手は抑えられた。
至近距離の会計は、さっき見た。と、クスリと笑った。
そして、唇に生暖かい何か。
「...っ!?」
驚いた拍子に開いた唇の隙間から、ぬるりとした何かが滑り込んでくる。それは、勢いよく俺の口内を暴れ回って、舌に絡んでくる。
「んっ...!? ふ、ん...んっ!!」
ぞわりとした感覚に身体から力が抜け始める。
なんとか身体を押し返そうとして抵抗するも、力が入らなくて障害にならないようで。
ふと、視線が絡まる。
俺の中まで無理やり覗いてくるような視線に悪寒が走った。
ゾワゾワとしたいいようのない恐怖に、思わず口内を暴れ回る舌を思い切り噛む。
バッと離れた会計は口元をおさえて俺を見る。
舌を噛んだ感覚が気持ち悪くて、口元をセーターの裾で拭う。
「ひほいなぁ」
口の端から流れ落ちる血を拭って、会計は楽しそうに笑った。口の中の僅かな鉄の匂いに吐き気がして、ゆすぎたくなる。
「...ふざけんな」
気色の悪い顔の横を、早足で駆け抜けてトイレに急いだ。
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