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2ー46
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えっ、僕。
時雨さんに抱き締められてる。
あったかいよ。
凄く。
どうしようせっかく、出さないように頑張った涙が出てくる。
僕が騒がずできるだけ静かに泣いていると、時雨さんに頭を撫でられた。
その後、時雨さんが言った。
「真白。
ごめんな、俺。
真白の記憶なくて。
正直言って記憶を取り戻せるかは、わかんねぇ。
でも、記憶が無い俺にも一つ分かることがあるんだよ。
それは、今俺の中にいる奴は、絶対に手放さないって事。
手放しちゃいけないって事は分かるんだ。
なぁ、真白。
真白にばっかり、無理させて悪いな。
真白は、俺に伝えたい事ないか?
何でもいい。
本当に何でもいいから俺に伝えたい事は、包み隠さず俺に全部言ってくれ。」
時雨さんは、こんな僕に何で優しい言葉をくれるんだろう。
僕に無理ばっかりって、時雨さんの方が無理してるはずなのに。
僕が、時雨さんに伝えたいこと……
「僕、時雨さんに伝えたい事あります。
でも、言ったら絶対に僕の事を嫌いになります。」
「ならないよ、真白。
俺は、真白の事絶対に嫌いにならない。」
嫌いにならない……
本当なのかな。
今から言うことは、凄く我儘で自分勝手な事だ。
でも、言いたい。
僕は、小さな声で言った。
「時雨さん。
僕が何を言っても、本当に嫌わないんですよね。」
「あぁ、あたりまえだ。」
「じゃあ、言います。
きっと、凄く我儘な事を言います。
本当に我儘で、きっと自分勝手な意見です。」
「それでも、いいよ真白。
真白、俺に教えてくれ。
真白は、俺に何を伝えたいんだ?」
時雨さんの言葉は、一つ一つあったかくて、優しい。
でも今から言う僕の言葉は、時雨さんを攻める言葉だ。
こんなにも優しい、時雨さんを……
でも、言いたい。
伝えたい。
僕は、時雨さんの背中にそっと自分の手を回した。
すると時雨さんは、僕の背中を撫でて少しだけ抱き締める力を強めてくる。
そして僕は、言葉を紡ぐ。
「僕の、僕のたった一つの願いは時雨さんと一緒にいる事です。
記憶を失う前の時雨さんにも言いました。
なのに、何で時雨さんは、僕から、離れていこうとするんですか?
約束したのに……」
あぁ、言った。
時雨さんに、我儘を。
僕って、最悪な人間だな。
時雨さんは、僕の事をどう思ってるのかな。
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