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次の日、高遠は昼の一時には塾に着いていた。塾を開けるためである。
しかし、先客がいた。
「う……っ」
「こんにちは……高遠先生」
檜山であった。
昨日の今日なので非常に気まずい。
「あ、はい……」
高遠はいつものように困ったように笑うと、塾の扉の鍵を開けた。
「……昨日はその、ホンマに、すいませんでした」
荷物を置いて椅子に座り一息ついた時、唐突に檜山が切り出した。
思わずどきりとして身構えてしまう。
「でも、オレの気持ちは変わりません……。好きです」
「ですから……意味がわかりません」
高遠がそう言うと、檜山は冷たい目で目の前の机を見つめた。
「……意味とか、そんなんがいるんですか」
「え……」
急に落ちた声のトーンに、高遠は思わずびくりと身体を震わせた。
「意味わからんとか、んなわけないでしょ。好きって言うてるんです。ちゃんと恋愛感情で好きって言うてるんですよ」
額を片手で押さえつけてうつむく檜山の姿は、とても痛々しくて苦しそうに見えた。
少し心が痛む。
「そんな軽率に……否定しんといて下さい」
苦しそうに吐き出した言葉があまりにも悲痛で。
高遠の心臓にぐさりと『罪悪感』が突き刺さる。
少しでもきちんと取り合えば良かったと少し公開した。
「檜山先生……待ってもらうことは出来ないんですか」
高遠がそう言うと、檜山ははっ、として顔を上げた。
「いつまでかはわかりませんけど……答えが出るまで、それまで、待ってもらえませんか」
馬鹿なことを言っているのは自分でもわかる。男同士の恋なんて滅多に実ることはない。世間体もある。
それでも――
「そ、それ……マジで言って……」
「……はい」
高遠はまた困ったような微笑を浮かべた。
それを見て、檜山はほっとした顔をして、にっこりと笑った。
「――めっちゃ嬉しい」
好きになってみようと思ったんだ――
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