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④
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あれから檜山と一緒に帰ることが多くなった。
高遠が早く終われば檜山を待っていたし、檜山が早く終われば高遠を待っている。
端からみればただの仲良しだろう。
しかし、案外檜山の隣は居心地が良かった。
どこか暖かいような雰囲気に包まれているようで気持ちが良かったのだ。
そして今日も二人は一緒に帰っていた。
「高遠先生、いつも待ってもらってすいません」
「いや、僕も待ってもらってますし。檜山先生こそいつもすいません」
高遠はにこりと微笑を浮かべた。
檜山は顔をほんのり赤くすると、同じようににこりと笑った。
「あの……高遠先生、良かったら食事しませんか」
そう言った檜山の瞳はふるふると震えていた。
「食事、ですか……。そうですね……じゃあ行きましょかぁ」
高遠はふわりとした笑顔で頷いた。
すっかり檜山に対しての不信感は抜けきっていた。毎日一緒にいると、仲の良い友人のように感じてとても居心地が良い。
本当に、ただの友人だったらどんなに良かったか――
高遠は檜山の瞳に恋情を読み取っていた。それはどれだけ望んでも消えることはなかった。
毎日、まるで友人のように振る舞っていても、檜山は高遠への見る目を変えようとはしなかったのだ。
間違いであったと思い直して欲しかった。
本当の『友人』になりたかった。
でも、そんなこと檜山には望めないのかもしれない。
彼は高遠を諦めないから。
「え、いいんですか。めっちゃ嬉しいです!」
そう言った檜山の顔はとても魅力的で。だって本当に嬉しそうに笑うから。
自分は強く出れないんだ――
それに。
「……――ないで」
「ん、なんですか」
檜山は高遠の口元に顔を近づけた。
すると、高遠は檜山のコートの袖をくいっと引っ張って言った。
「――寒いから……手ぇ、繋いでぇな」
少し、馬鹿になってしまう――
「……はい」
檜山は手袋をとると、高遠の手を握った。
その手はやはり温かくて、じわりと高遠の手を温めた。
その温かさが、また自分を馬鹿にするんだ――
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