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Side有生、34
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さっきから孝彰さん静かだな…
有生が戻ってきてから、自転車で家に帰ってきたけれど、孝彰はあまり話しかけてこない。それに...
(孝彰さん、疲れてる?)
門のところで顔を見た時から、それは感じていた。
少しの間だけど、正嗣と二人にさせてしまったのも、何か言われなかったかと気がかりだ。
今も、帰ってきた弟の陸から質問攻めにあっていて、ひとつずつ丁寧に応えてはいるが、何か違う気がする。
「陸、ちょっと孝彰さんを僕の部屋へ連れて行っていい?」
「えー、久しぶりに会ったから、もっと色々話したいのに、有生ちゃん独り占めずるーい」
「陸、ワガママ言わない...あ...孝彰さん、夜まで居られる?」
「あぁ、今日はそのつもりだったよ」
それを聞いて有生は台所にいる祖母のところへ。
今晩の食事を1人分追加して貰いたい相談だ。
すっかり孝彰とも仲良くなっている祖母は、それを快諾してくれ、夜までいてもらうことが出来た。
4人での楽しい食事を終え、後片付けもみんなでやってしまうと、まだ話をしたいと言う弟を振り切り2人は有生の部屋へ入った。
ソファーがないのでベッドに並んで座る。
「今日はごめんなさい、無理に引き止めちゃって」
「とんでもない、佐渡さんのご飯を一緒に食べられて、嬉しいよ」
佐渡、と言うのは祖母の名前だ。
(ばあちゃん、名前で呼ばせてたなんて可愛いな...けど...)
楽しそうな食事中の2人を思い出す。
有生は自分の思考回路にフッと笑ってしまった。
「どうかした?」
孝彰が不思議な顔で見ている。
「えっ...と...ばあちゃんに嫉妬しちゃって、つい...」
ちょっと恥ずかしくて小声になる。それに顔も熱い。
「嫉妬した?へぇ...有生にそんな独占欲があるとは、嬉しいな」
「...言わなきゃ良かった」
嬉しそうに身体を擦り付けてくる孝彰の体温を感じながら、照れくささで話題を変えようとして、今日の彼の違和感を思い出した。
有生は彼の方に身体を向けて、顔に手を伸ばす。
「...ん?」
「孝彰さん、大丈夫?何てゆうか…辛そうだよ」
「......有生」
孝彰は意外だと言わんばかりの顔をして有生を見る。
「あー...やっぱり、僕の勘違いかな。ハンサムなところは変わらないんだけど…違和感あって...わっ...」
話の途中でいきなり抱きしめられた。
「...ぇ...孝彰さん、どうしたの?」
「...有生...有生...有生に出会ってよかった、有生に好きになってもらって良かった」
孝彰の腕が有生の背中を思いきり強く引き寄せる。
「孝彰さん?」
「......このまま」
孝彰がそう呟き動かなくなったので、有生も両手を彼の背中にそっと回してギュッとする。そして、
「僕もだよ」
と小さな声で言った。
(僕だって、孝彰さんに好きになってもらって良かった、って凄く思ってるよ)
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