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彼の過去
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彼の話をしよう。
彼は陰険粘着質な16歳の少年だった。
幼い頃から甘やかされて育った為に自己愛が強すぎる。勉強は出来るが、本当の意味では賢くない。決められた目標を達成したり暗記したりすることが好きな、勉強はできるけど知識は役立たないタイプである。
顔は面長。瞳は大きめだが、タドン目で三白眼。いつも相手を伺うような、機嫌を伺うような、粘着質な目付きの為に可愛くない。濡れそぼったような黒髪は肩まであり、異様に白い肌。唇は赤く、おちょぼ口。
背丈はかなりの長身で、生まれ故郷の同年代のなかでは一番の長身だった。だが、異様に細い為に(お笑い芸人のア○ガールズタイプ)、長身要素は彼の魅力になっていなかった。
彼は生まれつき特殊な持病をかかえており、村唯一の医院に毎日通院している。そのせいで日光を避け、特定の食物しか口に出来ない為、学校での昼食はゼリー飲料しか口にしない。肌は異様に冷たく、夏は友人達に冷えピタ替わりにされていたりもした。力は外見の割りに異様に強く、コイン程度ならば片手でねじ曲げる事ができたが、その力は滅多なことでもない限り隠されていた。
彼は人間ではなかった。人間から産まれたのに人間じゃない存在、誰かに噛まれることなく発生した存在。彼は滅多に産まれない自然発生した吸血鬼だった。
そのせいで幼い頃は病弱で、レバー等の限られた食物しか食べることが出来なかった。
小学生になった頃には偏食は更に酷くなる。点滴でしか栄養補給ができなくなり、生命が危険視された時、彼は導かれるように医院の倉庫を漁り、置かれていた輸血用パックを貪った。
血を啜った後、劇的に回復した彼を見た村の医者は、異常を感じ取った。しかし、幸いな事に、彼の体の事は公表したりせずに秘密にした。
思春期を迎えた彼は、自分の異様な体に強烈なコンプレックスを持つようになった。
鋭敏すぎる五感に、太陽を疎む瞳と肌。強い力は誤れば人間の手すら簡単に折る。同年代の友人達は小麦色の肌をしているのに、冷たい肌は深海生物のように青白い。そして、物理的法則を無視した魔法のような力。
思春期を迎えた少年ならば喜びそうな力は、実際に手にしたら恐ろしさしかなかった。
まるで人ではないような自分。人ではない事を認めなくない彼は、自分から目を反らした。その力が何なのか調べる事も鍛えることもしなかった。
体が弱くて可哀想だと自分を甘やかしてくれる家族、あの子は病気だから仕方ないと気を使ってくれる村人に甘えることで満足した。彼は甘温い空気に満ち、少し駄々を捏ねれば許してくれる、自分に優しい村に満足していた。自立心など欠片も育たなかった。
そんな中、彼の安穏とした生活に不穏分子が入り込んだ。
都会からの転校生。
両親が亡くなり祖父のもとに引き取られた転校生は、彼が一番嫌いなタイプだった。都会育ちらしく垢抜けた外見に、他人の目線を気にしないぶっきらぼうな態度。自分のしたいようにして、物怖じしない行動。何を特別しているわけでもないのに、ついて行きたくなるような人物だった。体裁を気にする田舎の村ではありえない言動を繰り返したが、何故か転校生がすると許された。カリスマ性があるのか、どんなぶっきらぼうな態度でも皆は笑って受け入れ、自然と人が集まり女性にもモテた。だからといって不良ぶっているわけではなく、自立するために目標を立ててアルバイトや勉学に励み努力していた。
彼は転校生を嫌い、様々な嫌がらせをした。
そんな転校生にとって、甘ったれな彼は嫌悪感すら湧かなかったようで。転校生は彼を一切相手にせず、ただ突っかかってくるのをあしらいながら、石ころを見るような目付きで見つめていた。
自分に優しくしてくれない転校生に、彼は激怒した。周りはそれをフォローしてくれなかった。仕方ない物を相手にするように、転校生に絡む彼を宥めるが更に彼の心をささくれさせた。だがしかし、彼は何度も転校生に突っ掛かった。どんなに手酷い目にあっても、彼はめげずに転校生の周りで騒いだ。
早い話、彼は転校生が羨ましく、屈折した憧れを抱いていたのだ。
そんな中、あの夏休みが訪れた。親の手伝いもせずにダラダラと過ごしていた彼。
ある夏の晩。
彼は、何かを感じ取った。それは、吸血鬼の持つ縄張りを把握する力。危険な侵入者を知らせる感覚だった。彼は無意識に村を縄張りと認識しており、実は強い力を秘めた吸血鬼である彼が危険だと感じることはかなりの異常事態だった。しかし、力から目を反らしていた彼は意味が分からなかった。ただ、何かが来るという感覚に怯え、布団の中で怯えた。
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