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悩み襲来(2)
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「お疲れ様です」
「お疲れ様」
20時。終業時間になると、オフィスからは一人、また一人と社員の姿が消えて行く。
月末ともなれば、残業する社員も多いが、月半ばは皆それぞれに、仕事を切りがいい所で切り上げて帰路につく。
「あれ?篠原、残業?」
まだ帰る素振りを見せない俺に浅野がそう声を掛けた。
「うん…ちょっとデータ処理残ってるから」
「そうか。じゃあ、あんま無理すんなよ」
「あぁ、お疲れ」
-パタン-
あーあー…結局、今週末の事、言えなかったな…
妹の事は、きっと俺が、心配し過ぎなんだと思う。
妹が万が一浅野を好きになってしまっても、浅野が俺を好きでいてくれるなら、何の問題も無いはずだ。
なのに俺は何を心配してるんだ。
こんな事に悩んでるなんて浅野が知ったら、きっと「いいかげん俺の事信用しろよ」って言われそうだ。
…明日は言おう。
半分電気の消えたオフィスに、一人きり。ネクタイを緩めて、シャツの第二ボタンまで外して、袖を捲って気合を入れると、再びパソコンに向かった。
その時…
-ガチャ-
「ん?」
扉が開き、思わず扉の方へ振り向くと、浅野が立っていた。
「浅野?帰ったんじゃ…」
「忘れ物したから、カード通して戻って来た」
浅野はそう言うと、こちらに向かって歩いて来た。
「そうか」
俺は、短く返事をすると、パソコンに向き直った。
浅野が背後から近付いて来る足音がして、てっきり斜め前の浅野のデスクに行くのかと思ったら…
「はい。コレ」
浅野がそう言って、コトリ…と、音を立てデスクの端に置いたのは、缶コーヒーだった。
「あ…ありがとう」
わざわざ買ってから戻って来たのか?こう言うのは、やっぱ嬉しいもんだな。
-プシッ-
俺がプルタブを開けたのと、ほぼ同じタイミングで、何故か俺の隣上からも同じ音が聞こえて、不思議に思った。
忘れ物取りに来ただけなのに、何で浅野も、缶コーヒー飲んでるんだ?
「忘れ物取りに来ただけじゃなかったのか?」
「あー…んー何だったか忘れたから、今思い出してる」
浅野は俺の隣のデスクに立ったままお尻を寄りかからせる様にしながら、そう言った。
「プ…おじいちゃんかよ」
何か、今なら週末の事どさくさに紛れて言えそうな気がする。
「あの…」
意を決して言い出そうとすると…
「あ、そう言えば土曜日さ、新しいスーツ買いに行こうと思ってるんだけど、付き合ってくれないか?」
「へ…?」
思いがけず、浅野から先に週末の予定を提案されて、間の抜けた声を上げた俺を、浅野がニッコリと微笑みながら真っ直ぐ見つめてくる。
この表情好きなんだよな…見つめられると、ドキドキして…
こんなにカッコ良い浅野が俺の恋人なんだと思うと、嬉しいんだけど…何故だか複雑な気持ちになる。
イケメンな彼氏を持つ女の子って、みんなこんな気持ちなんだろうか?いや、カッコ良い彼氏なら自慢したいのが普通か?
でも俺の場合は…
「何だ?どうした?」
俺はきっと、浅野が元ノンケだと言う事を引きずってるんだと思う。
いくら今は男と付き合ってるっていっても、女の子と付き合ってた過去の方が長いから。
やっぱり、妹の事は言えない…
「いや、それが…今週末はちょっと用事があって無理かも」
「ふぅ〜ん、分かった」
浅野は口ではアッサリそう言いながらも、俺の顔色を探る様に見つめて来る。
「ごめん。来週埋め合わせするから」
俺は顔の前で両手を合わせ、そう言うと、浅野から視線を逸らし、パソコンに手を伸ばした。
「あ!思い出した!」
突然張り上げられた浅野の大声に、俺の身体がビクリと震えた。
「な、何だよ急に大声出すなよ!ビックリするじゃ…」
そう言い掛けた俺の顔の前に、影が覆い被さった。
唇に柔らかい感触がして…
「っ…ん」
浅野の唇が俺の唇を優しく啄ばみ、離れた。
「忘れ物…コレだった」
浅野はいたずらっ子みたいに笑ってそう言った。
「っ…初めから、この為だけに戻って来たのかよ?」
あぁもう…顔が熱い。
「あぁ。初めはそれだけのつもりだったんだけどな…」
今にも、再び唇が触れそうな距離でそう言いながら、浅野の指先が俺の頬を撫で、首筋へと滑っていく…
「ん…」
「会社で無防備に、ネクタイ緩めたり、シャツのボタン外してんじゃねーよ」
浅野は耳元で囁く様にそう言って、耳たぶに口付けた。
「っ…みんな帰ってるし、誰も見てないんだから、別にいいだろ。それに、たとえ見られても、誰も何とも思わない…あっ」
そう言い返すと、浅野の濡れた舌先が俺の耳を舐めたり、甘く噛み付いたりして来て…
「じゃあ…会社でこう言う事しても、何とも思われないって事か」
まったく…ああ言えばこう言う。
「っあ…それとこれとは話しが違う…っ…もういいだろ、はい終わり」
快感に流されそうになるのを必死で堪えて、浅野の肩を押し返して、そう言ったけど…
「-っうん」
より一層深い口付けが降って来て、舌を絡め取られる。
-チュ…ピチャ-
「ん…はぁっ」
「埋め合わせ、してくれるんだろ?」
唇が一瞬離れて、浅野にそう問い掛けられる。
「だから、それは…来週…っ」
「待てないって言ったら?」
浅野はそう言うと、再び唇を塞ぎながら、俺のネクタイをシュルリ…と、外した。
ボタンも一つ、また一つと外されて、素肌に、浅野の手のひらが這わされる。
「ん…だめだって…こんな所、誰かに見られたら…」
抵抗と言うには、あまりに弱い力で浅野の腕を掴む。
快感に、身体は正直だ。本心では、抵抗していない事も、浅野はきっと分かってる。
「カギ…閉めて来た」
浅野のその言葉に、俺は掴んだ手をそっと離した…
「あ、やっぱり開けて来た方が興奮する?」
「バカ」
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