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悩み襲来(10)
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その後…
一瞬そういう雰囲気になると、浅野は我慢してるのが丸わかりな顔で「病人に無理させるほど落ちぶれてない」と、言って笑った。
浅野は看病する気満々だったが、「また千尋が浅野について回って迷惑かけるかもしれないから帰っていいよ」と、いうと「ヤキモチか?」と言われたので「かもな」と、返した。
また妹に、ヤキモチなんてバカにされると思ったが「恋人からのヤキモチは嬉しいもんだ」とヤキモチを焼かれた当の本人が嬉しそうだったので、良しとする事にした。
いいって言ったのに、浅野は明日も来ると言って帰っていった。
何だかんだ、俺に会いたいと思ってくれるのは素直に嬉しい。
「あれ?浅野さん帰っちゃったの?」
「悪かったな俺だけで」
23時。コンサートから帰って来るなりキョロキョロと浅野の姿を探す千尋に、苦笑しながらそう言った。
「いや、お土産にグッズ買って来たから」
妹よ…流石に男性アイドルグッズをサラリーマンが使う事あるか?
何て、言おうもんなら千尋にキレられそうなので、言わずにいると、ガサゴソと袋からそのグッズらしき物を手渡された。
「はい。Tシャツとかは流石に着ないだろうから、タオル。本当は手渡ししたかったけど、浅野さんに渡しといて」
「ああ、明日も来るって言ってたから、お前が帰る前に間に合えば、会えると思うぞ…って、ん?二つあるけど」
千尋から手渡されたのは、同じタオルが二つ。
「もう一つはお兄ちゃんの分」
あぁ…俺の分か。
「…ありがとう」
同じタオルって事は浅野とお揃いって事だよな。
うーん、初めてのお揃いアイテムがまさか、アイドルグッズになるとは。
まぁ、でもコレならさり気無くお揃いに出来る…
って、違うぞ!彼氏が出来たらお揃いの物が欲しいとか、ペアグッズとかに憧れてたとかそんな訳じゃ断じて…
「お兄ちゃん…どうしたの?ニヤニヤして、気持ち悪い」
千尋にそう言われ、慌てて真顔に戻した。
「な、何でもない…あ、そう言えばお前、女の子紹介しろとか、浅野に変な事言うなよなー」
「だって浅野さんなら可愛い知り合い一杯いそうなんだもん。で、紹介してもらった?」
千尋は悪びれもせずに、興味津々といった顔でそう言った。
「ああ」
「どんな子」
「俺より背が高くて、筋肉もあって、モテるらしい」
さすがにベッドでのテクニック云々は、伏せてそう言った。
「なにそれ…スポーツ女子かなんか?それお兄ちゃんの好みなの?」
「悪いか?」
「別に悪くは無いけど…」
千尋の頭の中には、バリバリのアスリート女子が浮かんでるんだろう、意外だと言わんばかりな難しい顔をしながら、そう言った。
「ねーお風呂借りていい?」
しばらくして、ドアの開いたままのリビングから千尋に声を掛けられたので、布団の中からヒラヒラと手を降った。
「どーぞー」
「覗かないでね」
「はいはい、妹の裸に興味ありませーん」
興味あったらまずいだろ。
まぁ、俺の場合は女の裸自体に興味が無いんだけどな…
俺がゲイだと知ったら、千尋はどう思うんだろうか?やっぱり軽蔑するんだろうか?
もし仮に、打ち明ける日が来たとしたら、その時も俺の恋人として隣にいるのは…
浅野がいい。
次の日。
「おじゃましまーす」
「お、間に合った。良かったな千尋」
夕方頃、丁度千尋が帰る準備をしている所に浅野がやって来て、玄関に荷物を抱えて、千尋が奥から出て来た。
「浅野さん、兄の看病なんかに大事な休日使わせて本当にすいません」
千尋が俺の腰を肘で小突きながら、浅野にペコペコと頭を下げた。
「‘なんか,言うな」
千尋のひどい言いように、そう突っ込むと、まるでコントみたいなやり取りに、浅野はクスクスと笑った。
「いやいや、好きでやってるだけだから。あ、俺今日車だけど、駅まで送って行こうか?」
「ありがとうございます。でも、ちょっと買い物して帰ろうと思ってるんで、大丈夫です」
千尋の事だ、てっきり「いいんですかぁー?♡」と、なるかと思っていたら意外だった。
「じゃあまた。今度はゆっくり3人で飲みにでも行きましょー!お兄ちゃんは早く風邪治しなさいよ」
玄関で靴を履いて、振り向くと千尋は俺と浅野を交互に見つめて、そう言った。
「あぁ、気をつけて帰れよ」
「またね。気をつけて」
玄関でそんな別れのやり取りをして手を振った。
千尋もニコリと笑って手を振って…
「じゃあ、二人共お幸せにー♪」
-パタン-
「…」
「…」
ん?
オシアワセニ?
「なぁ。何か今の、バレてるっぽくないか?」
恐る恐るそう口にすると、
「ぽいな」
浅野も苦笑しながらそう呟いた。
その後俺達は、何故バレたのか、慌てて部屋の中をチェックして回ったが、原因は分からなかった。
「あははは…バレたとは限らないよな?」
「でも、千尋ちゃんハブラシの色でお前に彼女が居ないのを見抜いたぐらいだからな」
「なんだそれ。そんな事言ってたのか千尋」
俺が知らない間に、ガサ入れみたいな事してたのか…
「ん?それ何んだ?」
「あぁ、千尋から。昨日のコンサート土産だってさ。はい」
すっかり忘れていたお土産を浅野に手渡すと、浅野はさっそくそのタオルを広げた。
「ん?これ…」
浅野は広げたタオルにプリントしてある文字を見つめて、目を見開いた。
「どうした?」
もう一つの俺のタオルを開いて確信した様に、俺の顔を見つめて、
「篠原、残念なお知らせだ。確実にバレてる」
え…
「このタオル、一見同じ様に見えるだろ?でも、この文字、最近出した曲の歌詞が英語で書いてあるんだけど、男視点の歌詞と、女視点の歌詞になってて二枚合わせて、一つの曲になってるみたいだ。つまり…」
浅野の言葉にゴクリと唾を飲み込んだ。その後に続く言葉は…
「ペアタオル」
ああ…やっぱり。
「…いつ気付いたんだアイツ」
「コレを買って来たって事はコンサートに行く前だろ?」
どの辺で分かったんだ⁉︎そんなバレる所あったか?
「女って本当…」
「怖ぇぇ」
二人して仲良く、ため息をついた。
俺がソファーに座り頭を抱えていると、頭にフワリとタオルが掛けられ、頬を包まれた。
「いいんじゃないか。別に付き合ってるのは事実だし」
「あぁ…」
俺も、浅野の頭にタオルを掛けて、お互い見つめ合って、笑い合った。
If it's with you
(あなたとなら)
not afraid
(怖くない)
頭の上で繋がった文字は、
まるで俺達の事の様だった。
-悩み襲来 end-
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