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出張ラヴァーズ (1)
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「出張?」
「あぁ、明後日から福岡に二週間」
「結構長いな…」
思わずそう声に出して顔を上げると、浅野がニヤリと笑っているのに気が付いて、慌てて視線を逸らした。
周りに人がいるから、口に出しては言わないが、浅野が俺に何て言いたいのか、言わなくても分かる。
‘さびしい?,浅野の顔にはそう書かれていた。
だから俺も、‘お前がな,そう顔に書いて睨みつけた。
「吉浦の件か?」
浅野とのやり取りを見ていた先輩が、そう声を掛けて来た。
吉浦と言えば、ウチから福岡支社に異動した同期で、最近交通事故で全治二週間の入院生活になったらしいと、噂になっていた。
「はい。こっちで吉浦と俺が一緒に担当してたA社の福岡支社との取引の途中だったらしくて、先方の指名で、俺が行く事になりました」
なるほど。吉浦から引き継ぎをして、プレゼン、契約取って、今度は吉浦に引継ぎをして帰ってくれば、ニ週間の出張も頷ける。
先方から指名される何て、信頼されてる証拠だ。
…何だか複雑だ。
俺と浅野は、恋人でもあるけど、同僚であって、ライバルでもある。
自分の恋人の活躍を嬉しく思うのと共に、同僚として先を越されたような、気持ちにもなってしまう。
「頑張って来いよ」
俺は、モヤモヤとする気持ちを吹き飛ばすように、浅野に声を掛けた。
「あぁ」
一歩俺の先を行く浅野の笑顔に、
‘俺も、頑張らないとな,
そう心の中で呟いた。
「ふぅ…」
仕事が終わって部屋に帰るなり、ソファーに倒れ込む様にダイブした。
今日から浅野は出張に行った。
ゆえに、昨日の夜は…まぁ、そう言う事だ。
明日から出張だから、ほどほどにしとこうと言ったのに、結局二回いたしてしまった。
「腰ダルっ…」
今日は早く寝よう。
そう思って、軽い夕飯を食べて、風呂に入ってベッドルームに向かう。
「ん?何だコレ?」
ベッドの上に身に覚えの無い紙袋を見つけて、首を傾げた。
浅野が置いて行ったのか?そう言えば、朝から一緒に家を出た時、忘れ物したとか言ってベッドルームに行っていた気がする。
そう思い出しながら、恐る恐る袋を開けると…
「---ッ⁉︎」
俺の視界に飛び込んで来たのは、半透明なピンク色で、少し反り返った男根的な…
これは紛れも無く…
バイブ。
ご丁寧に、ピンク色で合わせたローターまで一緒に入っていた。
「アイツめ…」
てか、どう考えても俺に使えって事だよな、コレ?
俺って、こんな物使うぐらい欲求不満でエロエロなやつだって思われてんのかな?
くそ…抗議してやる!
俺は、携帯のディスプレイの‘浅野祐介,の文字を睨みつけながら、発信を押した。
-プルルル、プルルル-
何度目かのコールで…
『お疲れー』
「今どこ?一人?」
『んー、もうホテルだけど。どうした?』
電話に出た浅野の声は、何食わぬ声で、一層腹立たしさを煽った。
「‘どうした?,じゃない⁉︎何だよコレ!」
『コレって、何の事?』
「何ってそりゃぁ…バ…バイブ」
何か、口に出して言うの恥ずかしいな…
『あぁ、それそれ』
「お前、今ワザと言わせただろ⁉︎」
浅野の嬉しそうな声で、すぐに浅野の企みに気付き、そう噛み付いた。
『はは…即日発送って便利だよな一。昨日の昼に頼んで、翌朝には届いたぞ』
「そんな事はどうでもいいんだよ!何でこんな物頼んだ⁉︎」
的外れな浅野の返事に、俺がそう、まくし立てると浅野が、電話越しに笑った気がした。
『俺のが恋しくて篠原が泣いちゃうといけないから』
「誰が泣くか!」
『あと、単純に使ってる所見たいから』
「誰が使うか!」
『残念…折角、俺のサイズに一番近そうなのにしたのに』
「そんな気遣い要らないし!もういい!おやすみ!」
『あ、えっ…篠原…』
-ツーツーツー…-
「ったく…」
絶対使うもんか。
そして、絶対俺から電話掛けるもんか。
二週間なんて、あっという間だ。
恋しがる暇なんて…
「無いと思ってたんだけどな…」
良く考えてみたら、ニ週間も会わないのって、入社以来初めてだ。
三日目までは、浅野が居なくても別に大した事無いなと思ってたけど、一週間を過ぎると、何だか日常にポッカリ穴が空いたような気がして…
同じ職場であれば、ほぼ毎日顔を合わせる。だからこそ余計に、会えない日が言いようの無い違和感になってインクの染みの様にジワジワと広がって行く。
「寂しく何かないんだからな…」
俺からは電話しないって決めたし。
だから浅野から電話が無くても、痛くも痒くもないし。
声なんて聞かなくったって…
『篠原…』
ん?
『好きだ』
うわ…何か、頭の中に勝手に…
『こっち向けよ…』
いやいや、ダメだって。何考えてんだよ俺…
『でも、勃ってる』
え…
う…嘘だろ⁉︎
下半身の違和感に、ふと視線を落として、俺は目を疑った。
俺のソレは、頭の中の浅野の声に、ハッキリと、反応を示していた…
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