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出張ラヴァーズ(5)
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「………」
『………』
やってしまった…
これが世に言う賢者タイムってやつか?
状況を冷静に理解しようと、考えれば考える程、穴があったら入りたい…いや、埋まりたい程の羞恥心に襲われる。
初めてのテレフォンセックス、初めてバイブ挿入しながら、電話越しの浅野にイカされるなんて…
「こんな…信じらんねぇ…」
人として、大事な物を失った気がする。
『でも、一人でスるより気持ちよかっただろ?』
「っ…だから困るんだよアホ」
『何で?』
「何でって…自分で考えろよ」
そんなの…
浅野が居ないと、満足出来ない身体になってしまった事が証明された上に、電話越しじゃなくて、早く浅野に会いたいって、よけいに恋しくなったからに決まってるじゃないか…
『…バイブ使うのが癖になりそうで困るとか?』
何でそうなる⁉︎
「違っ…だから!早く会いたくなるから困るって…あ…」
つられて言ってしまった…
『…あんまり可愛い事言うなよ。仕事放り出して帰りたくなるだろ』
「そんな事したら福岡に送り返してやる」
口ではそう言いながらも、顔がにやけてるのが自分でも分かって、慌てて顔を引き締めた。
『別にいいけど?そのかわり、また電話で相手してくれるならな』
「っ…今日だけだって言っただろ!も…もう寝るから!」
改めて思い出しただけで、顔が熱くなり、早くこの話題から逃げ出したくてそう言った。
『あぁ、おやすみ』
耳元から浅野の笑みを含んだ声でそう言われて、同じベッドで眠る時の事を思い出す。
「おやすみ…」
少し名残惜しくなって電話を切るタイミングを逃すと…
『切らないのか?』
浅野が、俺をからかう様に笑いながらそう言った。
うわーうわー…
何だこのザ・遠距離カップルなやり取りは⁉︎めちゃくちゃ恥ずかしいじゃないか!
「い…今切ろうと思ってたんだよ!じゃあな!」
-ピッ-
「……はぁ…」
俺は誰が見ている訳でもないのに、真っ赤な顔を両手で隠しながら、溜め息を吐いた。
どうしてこんな事に…
浅野がタイミング悪く電話を掛けて来たせいだ!
…いや、そもそも俺が浅野の事を考えながら一人でシてさえいなければこんな事には…
「…って結局俺のせいかよ」
電話を切ろうと思えば出来たのに、それをしなかったのはきっと惚れた弱みだ。
求められたら応えてしまう。
会いたいとか、声を聞きたいとか、そんな単純な理由から、こんな事をやらかしてしまうなんてな…
浅野が帰って来た時に、一体どんな顔で会えばいいのか、不安でならない。
そう言えば前にもこんな事があったのを思い出した。
浅野と付き合う前、初めて浅野をオカズにして自慰をしてしまった次の日、俺は罪悪感から、一日中浅野を避けた。
今思えば、あからさま過ぎて笑える。
そりゃあ俺に嫌われてるんだと勘違いするのも当たり前だ。
まぁ、実際はその真逆で、今にいたるんだけど…
「…ったく、どうすんだよコレ」
ベッドの上に放り出されたバイブに、ローター。
ローションでベタベタな身体。
ふと、冷静にベッドを上を見回して苦笑した。
そりゃ、ヤってる最中は行為に集中してるからいいけど、終わった後に一人で後処理をするのは、なんとも情けなく、滑稽な事この上ない。
オモチャは使った後ちゃんと消毒しないといけないし、ローション使ったから、シーツだって変えないと。
でも、その前に…
「とりあえず…風呂入り直すか」
俺を情けない気持ちにさせた上に、風呂に入り直させた浅野に、どんな仕返しをしようか…
なんて、考えながらベッドから立ち上がった。
それから、お互いに電話する事は無かった。
それが、先日の電話での行為の気まずさからか、忙しさに気を使っての事なのかは定かでは無いが、その代わりに浅野からは一日の終わりに必ずメールが届いた。
[おやすみ]
[お疲れ様。おやすみ]
だけのやり取りな事がほとんどだったが、それだけでも嬉しかった。
あと四日…
あと三日…
と、一日の終わりにカウントダウンしながら過ごした。
なんだか、ご主人様の帰りを待ちわびるイヌになった気分だ。
そして…
その時は突然だった。
仕事から家に帰り、しばらくするとインターフォンがなって、ドアの向こうを確認すると、ご主人様…もとい、浅野が居た。
俺はどんな顔して会おうとか考えていた事も綺麗さっぱり忘れて、勢い良くドアを開けた。
まさに、ご主人様の帰りに尻尾を振りながら飛び出して来るワン公の様に…
「ただいま」
「おかえり…って、何で⁉︎」
予定では明日のはずだ。
ふと、『仕事放り出して帰りたくなるだろ』なんて言っていたのを思い出して…
「お前まさか…」
「ん?」
「福岡に、強制送還…」
俺が疑いの眼差しでそう言うと、
「プッ…違う違う!ちゃんと終わらせて来たんだって。いやー今回俺頑張った!」
浅野は慌ててそう言いながら、リビングにスーツケースを下ろし、ソファーに座り込んだ。
「早めに仕事片ずけられそうだったから、明日の朝の便、今日の夜に変更して帰って来た」
だからって、まさかその足で直接俺の家に帰って来るなんて思わなかった。
「そ…そっか、お疲れ様。丁度メシ作る所だけど、いる?」
正直一日早く会えたのが、すごく嬉しくて、浮き足立つ気持ちを隠しながらそう言ってキッチンへ行こうとすると…
「んー…メシより先に、とりあえず…」
ーガシッ!ー
「へっ⁉︎」
突然腕を掴んだまま引き寄せられた俺の体は、よろめきながら、浅野の胸の中にダイブした。
「‘充電,させて」
耳元で囁かれ、そのままギュッと強く抱き締められて、体から力が抜ける。
「っ…」
ずっと待っていた、浅野の体温。
息を吸い込めば、浅野の匂い。
その背中に腕を回し、さらにぴたりと引っ付いた。
磁石みたいに惹かれ合い、離れた時間を埋める様に…
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