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出張ラヴァーズ (9)
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俺は仕事から、浅野に至っては出張から帰って来たばかりだというのに、ハイペースで体を酷使してしまった俺達は、ベッドの上に疲れた体を投げ出し、出張中の間の事を、ゴロゴロとしながら話していた。
「で、福岡で食べたもつ鍋がめちゃくちゃ美味くてー…」
ぐ〜〜〜っ
「お…お前がもつ鍋なんか言うから」
俺の腹の虫が騒ぎ出した。
そう言えば夕飯の準備中で浅野が帰って来たから、まだ何も食べていない。
「腹減ったからメシ作って来る」
そう言って起き上がろうとした俺に浅野が抱きついて来て、腕の中に引き戻された。
「もうちょっといいだろ」
「はぃ?俺腹減ったんですけどー」
呆れながらも本心ではニヤニヤが止まらない。
そりゃあさ、俺だってこのままでいたいけど、でも腹の虫は治らないし、性欲が満たされたら、食欲だって満たしたい。
俺は空腹を紛らわす為に浅野の腕をガブガブと噛んでみた。もちろん甘噛みだけど。
「イテテ…そんなに腹減ってんのか?」
「だからさっきから腹の虫がそう言ってるだろ」
「じゃあそんな腹ペコ淳也くんに、いいものを上げよう」
浅野はそう言ってリビングに向かうと、何やらゴソゴソとした後で、ベッドの上に戻って来た。
「はい」
俺の口元に何かがちょん、っと触れて来て、視線を落とすと、その何かと目が合った。
「ん?」
茶色くて、甘い匂いの、つぶらな瞳が可愛い…福岡土産のド定番のひよ子だった。
東京にも同じ様な土産物があるのに、なぜこのチョイスかとツッコミたかったが、美味しそうな匂いに誘われて、頭からパクっと齧り付いた。
「頭から食べる派か」
浅野に突然そんな事を言われた。
「普通そうじゃないか?」
「そうか?俺、腹から食べる」
まさかの浅野の返答に、ひよ子がお腹を齧られてピーピー鳴いている絵図らが頭の中に浮かんだ。
うーん…可哀想だ。
「えー、頭から食べて、先に息の根を止めてやらないと、他の所食べる時痛そうだし、何かひよ子が可哀想」
口をもごもごさせながら悲しそうな顔でそう言った俺の頭を浅野の大きな手が撫でた。
「お前のそういう所、好きだわ俺」
「そりゃどうも」
何だか子供をあやすみたいな撫で方にくすぐったさを感じて身を竦ませた。
「じゃあ俺も、頭から食べる」
「別に合わせなくていいよ、好きに食べれば?」
別に、直して欲しいとかそんなつもりで言ったんじゃないんだけどな…
「うん。だから、今日から頭から食べるのが俺の好きな食べ方になったって事だよ」
浅野はそう言うと、自分の分のひよ子の頭をパクっと食べた。
ものすごくたわいも無い、こんな些細な事でも、浅野が俺を真似したり、俺が浅野を真似して、お互いが少しずつ似てくるのが、ちょっとだけ嬉しい。
そう言えば俺も、サラダは最後に食べる派だったのが、気がつけば最初に食べる様になったんだっけ…
きっと似た者夫婦ってのは、こう言う事の積み重ねで出来て来るんだろうなと思う。
「あ、そう言えばさ…コレどうする?」
浅野はふとそう言って、ベッドの上に投げ出されていたバイブを手に取った。
カチッとスイッチの入ったソレが俺の目の前でウインウインと卑猥に動く。
「捨てーる!」
せっかくしみじみと幸せを噛み締めていたのに、突然のバイブの登場にぶち壊されて、俺は浅野の手からバイブを奪うと、袋の中に放り込んだ。
「えーー」
「祐介だけで、俺は十分満足です」
「淳也…」
俺は再び抱きついて来ようとする浅野の腕を躱すと、ベッドの上に浅野を残して今度こそ夕飯を作りにキッチンへと向かった。
夕飯を作っている最中にチラッと浅野の様子を伺うと、俺に捨てられる前にバイブとローターを救出してクローゼットの奥にしまい込んでいたようだったが、見なかった事にした。
また使う時が来るのかは分からないけど、次はもう少し浅野に遊ばせてやってもいいかな…
なんて思ってしまう辺り、俺も大概浅野には甘い。
「これ福岡土産です。どーぞ」
2週間ぶりに会社に帰って来た浅野が休憩中にひよ子を配る。
「わー福岡バージョンの初めて食べます」
「味は東京のとそんな変わらないけどね。福岡のが発祥だから」
謎チョイスかと思っていたけど、意外と反応は上々みたいで良かったな浅野。
確かに東京に住んでたら東京土産バージョンのひよ子ってあんまり食べないし、福岡のと比べてみたいって思うのもアリだよな。
「いただきます♡」
そう言って女子社員の祐美ちゃんは包みを開けると、おもむろにひよ子の皮を剥がし始めた。
あっと言う間に皮と餡子に解体されたひよ子を美味しそうに食べる祐美ちゃんの横で、浅野はそれを複雑そうな顔で見ていた。
ふと、浅野と目が合って。
俺と浅野、二人同時に苦笑した。
きっと今俺達の頭の中は同じひよ子の映像が流れている。
どんな映像かって?
口に出すとスプラッタこの上ないから割愛するが、ひよ子の悲鳴が聞こえて来そうな映像と言えば察しが付くだろう。
「浅野さんも篠原さんもどうかしました?」
俺達の微妙な空気を感じたのか、祐美ちゃんにそう突っ込まれて
「いやいや、何でも無いよ」
「美味しそうだねー」
俺と浅野は慌ててそう言った。
「はい美味しいですー♡」
祐美ちゃんは無邪気な笑顔でひよ子の内Zo…餡子も平らげた。
そして俺も、昨日からと合わせて2個目のひよ子を、その可愛い顔に向かって心の中で「いただきます」と呟いてから、頭からパクっと口にした。
これからもこういう、浅野と俺、二人一緒のものを頭で見て、考えたり出来る事が増えたら嬉しい。
離れていたはずの出張のおかげで、俺達はまた近づけた様な気がした。
ー出張ラヴァーズ endー
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