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噂の彼(1)浅野Side
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「最近篠原さんちょっといいと思わない?」
「あ、分かります〜表情柔らかくなりましたよね」
おっと…
給湯室に行こうとしたら、女子社員のそんな会話が聞こえて来て、思わず後ずさりした。
外の壁面に背を当てて、ザ・盗み聞きスタイルな状況になってしまったが、俺は別に悪くは無いはずだ。
こんな所で俺の恋人のウワサ話をする方が悪い。
「なんか癒し系な感じがするんだよね、他の男の人よりガツガツしてないっていうか…」
「うんうん、男の人にこんな言い方変ですけど、ちょっと色気も感じるんですよね」
「あー、それも分かる。しかも、ここ最近じゃない?」
色気…か。
まさか女子社員にこんな風に見られてるなんて、篠原本人は露ほども思って無いんだろうな。
俺だって自分の恋人がそんな風に思われてる何て思ってもみなかった。
何とも複雑な気分だ。
篠原はいつも散々俺の事をイケメンだの、モテモテだの、いつも焼きもちを焼くのは自分の方ばっかりだとか言っていたけど、俺だって焼くときは焼く。
だって、色気なんて恋人である俺が感じるだけでいいのに、女子社員まで感じているなんて、篠原の色気がダダ漏れだって事だろ?
しかも無意識のうちに。
「彼女でも出来たんですかね?」
「かなー、今度忘年会の時にそれとなく聞いてみようかな」
おいおい。
これは、忘年会前に本人に言っておいてあげるのが恋人としての優しさだろうか?
まてよ…女子社員にまで色気を振りまいてしまっている事を自覚させるには丁度いい機会かもしれない。
さて、篠原は何て答えるんだろうか?
いや、その前に篠原が女子に振りまいている色気っていうヤツを観察してみる事にしよう。
「篠原さん、それ破棄分ですか?」
年末の書類整理は毎年の事だ。
篠原がシュレッダーの近くに書類を置いたのを見て、さっきの給湯室でのやり取りで篠原に色気があると言った張本人の田中さんがそう言った。
「あ、うん。小まめにやればいいのに、ついつい溜め込んじゃうんだよなー」
バツが悪そうに人差し指で頬を掻く篠原の仕草は、女性から見たら母性本能をくすぐる感じなのかもしれない。
「私やりますよ」
「いいの?」
「はい、手空いたので大丈夫です」
「じゃあ…お願いしようかな。ありがとう助かるよ」
まっすぐ目を見て小さく微笑む。
決して派手な笑顔じゃ無いけど、確かに他の男性社員のガサツな笑顔に比べたら、癒されるのも分かる。
む。
あんな笑顔、会社で俺にはなかなか見せてくれないのに、女子社員には見せてたのか。
でも、さっきの女子社員の話しでは、篠原が変わったっていうのは、どうも最近らしい。
一体いつからだ?
「……」
席に着いた篠原は、今度は何やら考え事を始めたようで、拳を唇へと添えた。
たまにやるんだよな、指で唇いじる仕草。
つい男のわりには赤みのある、ふっくらした唇に目がいく。
ーゴクッー
無意識に喉がなって、今の自分がいかにヤバいヤツか気付き、思わず口を手のひらで覆った。
変に思われない様にあくびのふりをして。
「…ふぁ」
あんなに何度もキスしてる唇なのに、今だにこんなに滾れるなんて、篠原の色気、恐るべし….
何て、明らかにこれは女性目線での観察じゃ無くなって来てる気しかしないな。
自分自身に呆れながら、さりげなく篠原を見ると、携帯を取り出して何やら操作し始めた。
篠原が手を止めたタイミングで…
ーヴヴ…ー
俺の携帯が鳴った。
ん?
目の前の篠原からLINE?内容を見ると…
[こっち見すぎ。仕事しろバカ。]
あらら。
[申し訳ございませんでした。]
俺もそう返して、苦笑しながらパソコンの画面に向き直った。
こんな事をしてると、サボってばっかりに思われそうだが、ちゃんと仕事はしているのでご心配無く。
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