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本当のこと
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「……っ、やめて…!」
「大きい声出すなよ」
口を塞がれ、あぁ。もうダメかな。そう思って抵抗を止めようとした
その時、不意に病室の扉が開いた。
誰かがこの状況を見たと思ったら、嫌だし、恥ずかしいし、情けないしで、涙が溢れそうで、それを隠すように顔を背けた
誰が入ってきたのかも分からないまま、それを見たくなくて目を強く瞑り続けた
「────離せ。」
「…な、なに怒ってんだよ」
「その汚い手、離せって言ってんの」
……この声、聞いたことある
中に入っていた指と、抑えられていた手が離れていく
急いで布団で身体を覆い、見られたくなくてベッドから降りようとする
その体を掴まれ、ビクッと震えた
「…結も、ちょっとじっとしててね」
…結って。
怖くて見れていなかったけれど、この声も、名前の呼び方も、…鈴のものだ
「2度と手出すな」
さっき俺に話しかけてくれた時とは違う、低くて怖い声。
「わ、悪かったって…」
「ほんとに分かってんの?」
「…ご、ごめんなさい…!」
「謝る相手間違ってる」
そう言うと、その人は急いで俺の前に来て両肩を揺すり、顔を上げさせた
「…だから、触んなって言ってんだろ」
見ていなくても、鈴が怒っているのは伝わってくる
いつも優しく笑っているだけに、怒った鈴は普通の人よりも怖いような気がする
布団をぎゅ。と握り、この状況に耐える
「……ほんとに、ごめんなさい!もうしないから!」
さっきの人が、がばっと頭を下げて必死に謝ってくる
「…いい。別に、そんな気にすることじゃないから」
怖かったけど、これは、嘘じゃない。
「…気にすることだろ」
鈴の冷たい声が聞こえ、言うなら今しかないと思った
「俺に、とっては…こんなの、珍しい事じゃない」
…俺は、もう汚れてる。
汚いならそう言って。嫌ならもう会わないから。
今ならまだ、鈴から離れられる。
でも、今しか言えないし、離れられなくなると思った。
「ちょっと、2人にさせて」
俺に頭を下げていた人が、もう1度謝り、部屋を出ようとして、もう1人の声が聞こえた
「話を聞かせてもらう」
見れば、主治医の先生で、多分鈴と一緒に来てくれたんだと思う
2人が出ていった部屋は妙に静かだった。
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