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鈴の家
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ベッドの上にふたりで並んで座る。
俺は膝を抱えてそこに顔を埋めた
「急に呼び止めちゃってごめんね」
「…大丈夫」
そう返してから沈黙が続く。
俺も話が上手な訳ではないから話題の振り方とか続く会話方法とか分からない
「……あの、さ」
弟さんの遠慮がちな声が聞こえた
「鈴の、どこを好きになったの?
…あ、良いところがないって意味じゃなくて、その…強いて言うなら、って感じで」
「……どこ」
どこだろう。
改めてそう聞かれると難しいかもしれない
結。ってあんなに優しい目で俺のことを呼んでくれた時かな
元々、あんまり名前で呼ばれることがなかったからあの時は確かに嬉しくなった
夜中に『でも食べてくれて良かった』ってご飯を用意しながら頭をなでてくれたときかな。
放っておけばいいのに、不思議だと思った。でも側にいてくれて、優しく頭を撫でられて、温かい気持ちになった
それとも、『今描く!』って病院での約束を果たしてくれたときかな
だんだん完成していく絵が楽しみで仕方なかった。鈴の楽しそうな表情も嬉しくてあの絵はずっと大切にしている
額を買いに行ってくれたことも、嬉しかったな。
それか『結が怖いって思ってるのに、そういう事をした』って怒られたとき?
怒られるのは怖かったけど、鈴の優しさなんだと気づいたら涙が出そうだった
「……どこだろう」
無いわけじゃなくて、選べない。
他にも色々あった。本当に、いろいろ。
でも、何が好きかと強いて言うなら
「…笑った、顔。
それと、皆が鈴の側を居場所にできるくらい温かいとこ」
俺は鈴の笑顔がすごく好きだと思う。
俺が不安に思っていること、怖いこと。そういう事は大体、鈴の笑顔で解決する。
あの優しい笑顔で笑って、頭を撫でて「大丈夫」ただ一言そう言ってくれるだけで充分なくらいに幸せになれて、そして怖いもなくなる
いつも鈴は笑っているから、俺は不安にならないでいられる。
あとは鈴の心の中が好き。
鈴はみんなに好かれている
どこにいたって、なにをしたって、近くに誰かがいる。
その人たちはみんな、笑顔。
鈴の側にいて、笑顔になれる。
鈴にはそういうことができる。
誰かが楽しく思えたり、嬉しくなったり、そういう事が鈴の側でできることが嬉しい。
たくさんの人が、心を許せるくらいに優しい気持ちをもった鈴が好き。
ちら。と弟さんを見れば嬉しそうに微笑んでいた
「なるほどね」
鈴が結くん好きになるのもわかる。と小さな声で呟いたのが聞こえた
今は鈴の話をしていたのに、何で俺を好きになるのがわかる。って話になったんだろう
「結知らなーい?」
突然、ガチャっと扉が開いて鈴が入ってきた
「あー。結のこと拐ったでしょ」
「わっ、拐ってない…あ、拐ったって事になるのか…?」
慌てる弟さんを見た鈴がクスクスと笑う
「今回は特別に許してあげる」
弟さんの頭を撫でたあと、俺の前にしゃがんだ
「母さんが夜ご飯一緒に作る?って聞いてる」
「……作りたい」
「ふふ、頑張るね。じゃあ行こっか」
手を引かれて立ち上がる
弟さんは「ご飯楽しみにしてる」と手を振ってくれた
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