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「…同情しちゃ駄目だって、言ったのに」
逢坂は耳元で溜息をつくと、鈴を拾い上げ、小さく振った。
澄んだ鈴の音が、辺りに響き渡る。
「清浄なる銀鈴の音色よ
怨に憑かれし魂達を
現生の呪縛から解き放ち 天上へと導け」
唄うような逢坂の声。
側で、霊の割れるような叫びが聞こえる。
「…はい、終わり。もう消えたよ」
逢坂がそう言いながら、ぱんっと手を叩く。
破裂音と共に緊張の糸が解れ、恐る恐る逢坂を見上げる。
「…君って、もしかして馬鹿なの?」
「……は?」
目が合った瞬間、そんな言葉を投げかけられ、軽く固まる。
逢坂はわざとらしく溜息を吐き出すと、あのね、と呆れたように言った。
「同情しちゃ駄目だって、さっきも言っただろう。今も、わざわざ忠告したのに。全く、お人好しなのか、馬鹿なのか…」
「だ、だって……」
「だって、何?さっき酷い目にあったのだって、君の心の中に隙があったからなんだよ」
「隙…?」
そう、と逢坂は頷いた。
「君の体質は、霊を引き寄せる。けれど、それだけだ。君自身に付け入る隙がなければ、霊だって何もしてこないだろう」
逢坂の目は、真剣そのものだった。
「知らず知らずの内に、君はそういう者達に対して、同情や情けをかけてしまっているんだ。残念だけど、あの者達はもうこの世の住人じゃない。同情なんて、してはいけない。逆に、君にとって害になるだけだ」
自分にとっては良かれと思っていた行為だったのだが、側からみればそれは愚かでしかないのだ。
分かりやすく凹む俺を、逢坂はくすりと笑った。
「だからといって、君自身の性格を否定するつもりはないよ。むしろその性格は、この世界に於いてはプラスに働くだろうから」
「…フォローされると、逆に辛くなるんだけど」
「そんなつもりで言ったわけじゃないけど。まあ、いいや。それより、怪我とかしてない?大丈夫?」
「ああ、身体は、何ともない」
「そっか、それならいい」
逢坂はにこりと笑うと、それじゃあさっきの続きね、と話し始める。
「取引、そう言っただろう。さっきも見せた通り、俺はこの鈴で君を護ることが出来る」
「護ってくれんのかよ?」
「うん。そのつもり。ただし、取引というからには、君からもメリットを差し出して貰わなければ、成り立たない」
「…俺が差し出せるものなんて、何もないけど」
「それが、あるんだよ」
逢坂は、鈴を手にしたまま、微笑を浮かべた。
何だろう、そう考え込む俺を他所に、逢坂は着ている白いワイシャツのボタンをゆっくりと外し始めた。
「…っな、なにして…」
意表を突かれ、声が裏返る。
逢坂は俺の問いには答えずに、着実に一つずつボタンを外してゆく。
そうして全て外し終えた後、パサリと逢坂は服を脱ぎ捨てた。
その瞬間、目に入ってきた光景にーー俺は思わず息を呑んだ。
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