アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
20
-
◇◇
「おはよう、林野君」
朝学校に着き、自分の席に座った途端、隣の逢坂が笑みをたたえながら話しかけてくる。
不思議なものだ。
昨日逢坂が転校してきたときは、自分とは住む世界が違う人で、出来るなら関わりたくないと思っていた。
けれど、それが1日で、こんな挨拶をするような仲になっているなんて。
若干の気まずさを感じながらも、おはようと返す。
「あの後、何もなかった?襲われたりとか…」
逢坂の質問に、少し迷ってから、首を縦に振る。
「…いや、なかった。大丈夫」
「そっか、良かった。君に何かあったら、大変だから。…あ、そうだ」
逢坂はふっと何かを思い出したように、鞄から携帯を取り出す。
「昨日言いそびれたんだけど、何かあった時のために、連絡先交換しておいた方がいいと思うんだ。…君が襲われたとき、すぐに駆けつけられるように」
「ああ……それはいいかも。ちょっと、待って…」
確かに、万が一に備えてお互いに連絡出来るようにしておいた方がいいだろう。
鞄を漁り、携帯を取り出す。
そうして逢坂と連絡先を交換し終えてーーはと、気付く。
クラス中の女子達の視線が、こちらに集まっていることに。
原因は多分、いや十中八九、逢坂だろう。
逢坂から離れろとばかりに向けられた、殺気立った鋭いナイフのような視線。
慌てて逢坂から距離を取ろうとしたのだが、それより早く、逢坂がそっと頰に手を伸ばしてきて。
「…林野君」
「……え、っ…」
くっと上を向かされて、目を合わせられる。
そうすれば、嫌でも昨日の夜のことが脳裏に蘇って、変にドキドキしてしまう。
「…少し、顔色悪いね」
「…っそ、そうか…?…あの、もう少し離れて…」
そっと肩を押してみるが、逢坂は手を離してはくれない。
それどころか、額をくっつけてきて、熱はないみたいだけど、と確認する始末。
ーー女子の刺さるような視線が、痛い。
「大丈夫?具合が悪いなら、いつでも言って。保健室まで付き合うから」
「いっ…いい、大丈夫だから…!」
「駄目だよ。守るって言ったんだから、ちゃんとその責任は全うする。…だから、何かあったら俺に教えてね」
真剣な瞳と有無を言わせぬ口調に、どきっと心臓が跳ねる。
心配してくれているのだ、ということは、十分に伝わってくる。
それは素直に、嬉しかった。
けど……距離がとにかく近い。
出来るなら、もう少し離れてほしい。
顔が綺麗なせいか、無駄にドキドキするし、それに女子の目も怖いし。
「…わ、かった……何かあったら、お前に知らせる」
少し逢坂から距離を取りつつ、ゆっくりと頷く。
俺の言葉に、逢坂は良かったと目を細めて、くしゃりと笑う。
その笑顔に少しの罪悪感を覚えながらも、自分もぎこちない笑みを返した。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
16 / 128